医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-65:癌転移を引き起こす血清因子の探索研究代表者:山内 明(生化学) 悪性腫瘍では組織浸潤や血行・リンパ性転移にて致命的となることから、転移抑制が攻略の一つとなる。我々はこれまでリアルタイム細胞動態解析法(TAXIScan法)を用いて癌細胞株の走化能の評価系を構築してきた。この方法で脂質メディエータの一つリゾフォスファチジン酸(LPA)への遊走が、ヒートショックタンパク質90阻害剤NVP-AUY922で抑制されることを見出した(H25プロジェクト研究)。一方、癌細胞はウシ胎児血清に対して最も強く走化性を示すことが分かっている。本研究の目的は、血清中に存在する癌細胞の強い走化性惹起物質を見出すことである。 まず、タンパク質性の因子について検討した。ウシ胎児血清を120℃、20分間加熱してタンパク質成分を変性させた後、膵癌BxPC3細胞株の走化性惹起活性を検討したところ十分に強い活性がみられたことから、目的の因子はタンパク質成分ではないことが分かった。次に、脂質性因子について検討したところ、加熱後血清は脂質メディエータLPA、スフィンゴシン1リン酸(S1P)およびセラミド1リン酸(C1P)の単独または混合液への走化性惹起活性よりもはるかに強い活性を示した。これらのことから、目的の因子は、タンパク質でなくLPA、S1P、C1Pでもない脂質成分または低分子化合物であることが推測された。現在、ウシ胎児血清を分画し、活性成分を分析中である。26基-56: 自然免疫と炎症反応を制御する漢方薬による遺伝子改変癌悪液質モデルマウスの腫瘍進展と寿命の制御の検討研究代表者:中村 隆文(産婦人科学1)【目的】遺伝子改変悪液質モデルマウス(αT3βマウス)を用いて、自然免疫賦活や抗炎症作用のあると考えられている漢方薬を投与して、腫瘍の浸潤進展の抑制や寿命延長の効果があるかを検討する。【方法】1)SV40T抗原を水晶体上皮に発現させて、上皮性未分化癌を眼球内に発生するαT3マウスと炎症性サイトカインであるIL-1βを水晶体上皮に過剰に発現するαIL-1βマウスと交配させて悪液質モデルαT3βマウスを作製維持する。2)十全大補湯・補中益気湯・小柴胡湯の1.5%混飼を作製して、αT3βマウスに長期間(約1年間)投与した場合のαT3βマウス腫瘍の増殖進展や担癌マウスの寿命について検討した。【結果】1)αT3腫瘍局所に炎症性サイトカインのIL-1βを産生させたαT3β悪液質モデルマウスは水晶体上皮性未分化癌の浸潤進展による眼球の破壊の進行がαT3マウスより早く起きることを確認した。2) 正常な免疫系を有するαT3マウスは担癌状態で1年以上生存が可能であるが、αT3腫瘍局所に炎症を起こしているαT3βマウスの寿命はαT3マウスより短縮することを確認した。3)十全大補湯・補中益気湯投与αT3βマウスは非投与マウスと寿命の差は認められなかったが、小柴胡湯投与αT3βマウスは有意に寿命の延長がみられた。【結論】IL-1βによる腫瘍局所の炎症によって癌の浸潤・進展が増悪している悪液質モデルマウスの寿命は小柴胡湯を投与することにより延長した。今後は小柴胡湯投与マウスの腹腔内マクロファージの抗腫瘍活性機構を解明する予定である。S46川 崎 医 学 会 誌

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