医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-34:腫瘍細胞におけるDKK3遺伝子強制発現/ノックダウンの影響研究代表者:片瀬 直樹(分子生物学1) Wnt signalの異常はあらゆる種類の腫瘍で認められ、その原因にはsFRPやDKK familyなどのWnt inhibitorの機能低下が報告されている。DKK3はREICの別名で癌抑制遺伝子としても知られ、種々の癌で発現が低下ないし消失している。しかし、我々はDKK3が口腔扁平上皮癌(OSCC)、食道癌、膵臓癌などの一部の癌では高発現していることを見いだし、特にOSCCではDKK3発現群は予後不良であることを明らかにしている。本研究ではOSCC細胞株でDKK3を一過性に強制発現、またはshRNAを用いて安定的にノックダウンする系を樹立し、細胞増殖、浸潤性、遊走性への影響を評価した。DKK3強制発現により細胞の浸潤性や遊走性が亢進する傾向が認められた一方、DKK3発現抑制では細胞増殖、浸潤性、遊走性の全てが有意に低下した。TOP/FOP flash assayの結果からは、DKK3の強制発現ではWnt/β-catenin経路によりTCF/LEFを介した転写の活性化が生じる可能性が示された。結果からは、DKK3がOSCCでは癌抑制遺伝子ではなく、組織特異的にWnt signalを介して腫瘍の浸潤や転移を促進する可能性が示唆される。今後はDKK3発現とWnt signal分子の変化、Wnt target geneの発現に注目して解析を進め、in vivo解析への基礎データを得る。26基-66: 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性肺癌のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤耐性獲得における染色体外二重微小染色体の役割研究代表者:越智 宣昭(総合内科学4) 上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)はEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対し、劇的な治療効果をもたらす一方でその耐性化が問題となっている。耐性化のメカニズムとして半数をEGFR遺伝子のExon 20にみられる点突然変異が占める。一般に癌細胞ではMYCN、EGFR、あるいはERBB2などの遺伝子の増幅を認めるが、その遺伝子増幅の機序としてhomogenously staining regions(HSRs)、distributed insertions、double minute chromosomes(DMs)が知られている。DMは環状DNAでセントロメアを有さないため、有糸分裂時に複製されず娘細胞に不均等に分配されていくという性質を持つ。実臨床においてEGFR-TKIに耐性化後にしばらくすると再びEGFR-TKIに感受性を示す例を少なからず経験する。これまでは耐性化細胞のdoubling timeの延長や、他の治療による再選択などにより説明されていたこれらの減少が、DMsによる耐性化遺伝子の増幅パターンの違いにより、より合理的に説明しうるのではないかとの視点から本研究を立案し、既存の肺がん細胞株とEGFR-TKI耐性細胞株をFluorescence in situ hybridization(FISH)により解析しDMsの存在と耐性への関与について検討した。― 癌 ―S45

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