医学会誌 第41巻 補遺号
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26ス-5:HMG-CoA還元酵素阻害薬のミトホルミシス効果を介したNrf2活性化の検討研究代表者:庵谷 千恵子(腎臓・高血圧内科学)【背景】これまでにスタチンの腎保護効果の機序にNrf2活性化が関与していることを報告してきた。Nrf2KOマウスを用いてNrf2活性化の分子機序を解析した。【方法】 (1) Nrf2KOマウスを用いSTZ糖尿病モデルを作成し、WT-STZ、Nrf2KO-STZをそれぞれアトロバスタチン投与群、非投与群に分け、尿中アルブミン変化率、腎組織を検討した。 (2) 正常ヒト糸球体内皮細胞(hGEC)を用いて、スタチン添加によるNrf2活性化及びその機序を検討した。【結果】 (1) スタチン投与によりWT-STZ群ではアルブミン尿出現が有意に抑制されたが、Nrf2KO-STZ群ではその効果が限定的であった。(2) hGECではスタチン添加によりAntioxidant-Response Element (ARE)転写活性の上昇、Nrf2関連遺伝子の発現増加を認め、その発現はミトコンドリア酸化ストレス消去薬の添加で抑制された。【結論】スタチンはミトコンドリア呼吸鎖由来の活性酸素種産生を介してNrf2を活性化し糖尿病におけるアルブミン尿の進展を抑制しうることが示された。抗酸化薬とスタチンの併用はスタチンのアルブミン尿抑制効果を減弱させる可能性がある。26基-93: 外来通院中の高血圧患者におけるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)/持続性Ca拮抗薬(CCB)による家庭血圧変動性、アルブミン尿減少効果の検討研究代表者:駒井 則夫(腎臓・高血圧内科学)【目的】本研究は、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)またはCa拮抗薬(CCB)で治療中の降圧不十分な外来通院中の高血圧患者における血圧変動性について、ARB/CCB配合剤の有効性を評価する。【方法】4週間以上CCBアゼルニジピン16mg/日、もしくはARBオルメサルタン20mg/日を服用していて、家庭血圧が直近5日間の測定にて平均値135/85mmHg以上の降圧効果不十分な外来高血圧患者を対象とした。オルメサルタン20mg/アゼルニジピン16mg配合錠(1日1回朝食後経口投与)に変更後16週間で、家庭血圧の変動性を評価する。腎機能(eGFR)の変化とアルブミン尿の変化も合わせて検討した。【結果】解析可能であった症例は31名であった (男性16名、女性15名、平均年齢73±12歳、44~86歳)。試験前血圧は144/82±13/14 mmHgであったが、配合剤に変更後16週では、138/77±16/13mmHgに有意に低下していた。eGFRは64.0±15.7ml/minから平均-1.8±6.9ml/minの低下を認めたが、有意ではなかった。アルブミン尿は50.3±148.2mg/gCreから36.9±103.0mg/gCreと低下傾向にあった。30mg/gCre以上の微量アルブミン尿を呈する患者さんでは全例アルブミン尿の低下を認めた。【結語】ARB/CCB配合剤への切り替え後、家庭血圧は有意に低下した。腎機能にはほとんど影響がなく、アルブミン尿の減少効果が認められた。配合剤は、高血圧治療において、積極的な使用が推奨される。S39

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