医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-95:In vivo レニン可視化技術の開発研究代表者:桑原 篤憲(腎臓・高血圧内科学) 糖尿病は低レニン状態であるにも関わらず、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬が奏功する。これには循環RASとは別に存在する組織RASが関与していると想定されてきた。しかし、糖尿病における組織RASがin vivoで実際に活性化しているかどうかは不明であった。本研究では、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理と多光子レーザー顕微鏡を用い、生体でレニン活性を可視化検出しうるin vivo imaging技術を開発し、糖尿病における組織RASの役割を明らかにすることを目的に実験を行った。ストレプトゾトシンによってC57B6マウスに糖尿病を発症させ、糖尿病(DM)群、アリスキレン投与(DM-Alis)群とバルサルタン投与(DM-Val)群に分け、糖尿病を発症させなかった対照(Cont)群と比較した。尿中アルブミン排泄量は、Cont群85±15 μg/day、DM群220 ± 25 μg/day、DM-Alis群120 ± 21 μg/day、DM-Val群135 ± 18 μg/dayであった。また、FRETシステムで評価したin vivo 組織レニン活性は、Cont群と比較してDM群で著明に亢進しており、DM-Alis群とDM-Val群では有意に改善していた。In vivo imaging技術によって、生体での組織レニン活性化状態を可視化することができた。この新しい技術を用いて、腎疾患におけるRASの役割がさらに解明されることが期待される。26基-98:酸化ストレス依存的FOXO/Wntシグナル活性化による腎線維化機構の解明研究代表者:佐藤 稔(腎臓・高血圧内科学)【目的】腎線維化は進行性腎障害の重要な予後規程因子である。近年、尿細管上皮細胞のG2/M期での細胞周期停止が腎線維化進行に関連していることが明らかとなった。酸化ストレス条件下では、G2/M期の細胞周期停止に転写因子FOXOが関与する。FOXOは酸化ストレスの亢進によりWntシグナル下流の伝達蛋白であるβ-cateninと複合体を形成する。Wnt/β-catenin経路活性化は、腎障害の進展にも関与している。我々は「酸化ストレス増加によるFOXO/β-catenin複合体形成増加が線維形成性サイトカイン分泌を増加させる」との仮説を立て検証した。【方法】ヒト培養尿細管上皮細胞を用いた。活性酸素存在下において、LiClでWnt刺激を行い、G2/M期へ細胞誘導された細胞の比率をFACSにて検討した。また、G2/M期細胞では線維形成性サイトカインのTGF-β、CTGFのmRNA発現が増加するのかを検討した。また、酸化ストレスによるFOXOのリン酸化、β-catenin/FOXO複合体形成もWestern-blotで検討した。【成績】活性酸素存在下では活性酸素非存在下と比較し、Wnt刺激によるG2/M期への細胞誘導が増加した。また、GADD45aなどのG2/M期細胞特有の蛋白の遺伝子発現も増加していた。このG2/M期細胞ではTGF-βの発現、CTGFの発現も増加していた。酸化ストレス亢進によるJNK活性化がbeta-catenin/FOXO複合体形成を増加させ、GADD45aの遺伝子発現増加に寄与していた。【結論】酸化ストレスは細胞のG2/M期での細胞周期停止と引き続く線維形成性サイトカイン分泌を増加させる。臨床的に、酸化ストレスの軽減が腎の線維化を軽減させる可能性がある。S38川 崎 医 学 会 誌

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