医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-73: 超微小血管吻合(外径0.3~0.5mm以下)の実験的研究 -Untied Stay Suture法と従来法の比較検討-研究代表者:長谷川 健二郎(脊椎・災害整形外科学) 超微小血管吻合術は、川崎医科大学に在籍された山野慶樹先生(現大阪市立大学整形外科名誉教授)、光嶋勲先生(現東京大学形成外科教授)が、ウルトラマイクロサージャリー・スーパーマイクロサージャリーとして発表され、川崎医科大学を本邦の代表とする施設として発展させてきた。しかしスーパーマイクロサージャリーを駆使できるマイクロサージャンは限られており、この技術は個人の技能に大きく依存していた。これに対し、研究代表者である長谷川健二郎は、外径0.3~0.5mm以下の超微小血管やリンパ管を吻合する方法としてUntied Stay Suture法を考案し、この方法を指尖部再接着術、リンパ管静脈吻合術、穿通枝皮弁などに応用し、耳介の切断症例の再接着にも成功してきた。そして、日本マイクロサージャリー学会学術集会(2013・2011・2010)・日本手外科学会学術集会(2012)・日本形成外科学会総会・学術集会(2011)・日本リンパ学会総会(2010)・形成外科手術手技研究会(2010) ・中部日本手外科研究会(2015)で主題ならびにシンポジウムに選ばれて発表してきた。 Untied Stay Suture法は超微小血管・リンパ管の吻合法として考案・開発されてきたが、一般的な外径1.0mm前後のマイクロサージャリーにも応用可能であり、特に若いマイクロサージャンには有用な方法だと考えられる。 川崎医科大学のマイクロサージャリーの継続、発展においては実験研究に裏付けされた新しい技術の開発と臨床応用、そして次世代のマイクロサージャンの育成が重要と考えている。そのための環境、基盤の整備が必要である。26基-69:関節炎による血管内皮機能障害に対する降圧薬の比較検討研究代表者:作田 建夫(リウマチ膠原病学) 関節リウマチ患者は一般人と比べ心血管疾患による死亡のリスクが高く、病因として全身性の炎症が重要な役割を果たしている。活動性の高い関節リウマチ患者では早期から動脈硬化の初期病変である血管内皮機能障害が生じており注目されている。このような臨床的背景のもと、その病態機序解明のため、以前に我々は関節リウマチの動物モデルであるアジュバント関節炎ラットモデルを用いてその解析を行った。その結果、ラットのアジュバント関節炎モデルでは大動脈の内皮機能が強く障害され、動脈壁のNAD(P)H oxidase活性亢進とeNOSのuncouplingによって酸化ストレスが亢進していることを明らかにした。さらに、心血管疾患の病態に深く関与しているレニン・アンジオテンシン系が関節炎モデルラットの血管局所で活性化しており、アンジオテンシン受容体拮抗薬は関節炎ラットモデルに対して血管保護的に働いた。次の検討課題として、高血圧に対してカルシウム拮抗薬もしくはアンジオテンシン受容体拮抗薬で治療中の関節リウマチ患者を対象として、降圧薬をカルシウム拮抗薬からアンジオテンシン受容体拮抗薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬からカルシウム拮抗薬にそれぞれ変更し、血圧を同等にコントロールした。降圧薬の変更前後における血管内皮機能を測定し、降圧薬の種類によって血管内皮機能障害の程度に差が生じるかどうかについて解析している所である。S36川 崎 医 学 会 誌
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