医学会誌 第41巻 補遺号
39/90

26基-9:慢性虚血肢の重症度と血行再建に及ぼす血管内皮機能について研究代表者:正木 久男(心臓血管外科学)目的:慢性下肢虚血肢の重症度と血管内皮機能の障害程度の関連性を明らかにすることとバイパスや血管内治療の血行再建により血管内皮機能が改善するかどうかを明らかにする。対象と方法:下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)16例を対象とした。年齢は50-88歳、平均72歳、男性13例、女性3例、Fontaine分類では、Ⅱ度11肢、Ⅳ度5肢であった。動脈硬化危険因子として、虚血性心疾患5例(31%)、高血圧13例(81%)、腎機能不全6例(38%)、糖尿病9例(56%)、喫煙13例(81%)、脳血管障害2例(13%)、高脂血症6例(38%)であった。方法は、安静時ABI、重症虚血肢には、Perimed社製PeriFlux System5000を用いて、仰臥位で患肢の足背部と足底部を測定した。別の日の早朝にCCI社製Endo-PAT2000で血管内皮機能を測定した。血管内治療ないしバイパス3ヶ月後に再度測定した。血管内皮機能のRHIで2.1以上は正常(N)、1.68-2.1は軽度障害(M)、1.67以下は中等度以上障害(P)とした。結果:全RHIは1.26±2.21であった。FontaineⅡ度ではRHIは2.64±1.62でRHIがNであるのが、5例(45%)、Mが2例(18%)、Pが4例(36%)であった。Ⅳ度では、RHIは1.90±0.77で、RHIがNであるのが1例(20%)、Mが1例(20%)、Pが3例(60%)であった。血行再建例後3カ月に測定できたのは1例のみでRHIには変化がなかった。結語:ASOでは、62%は血管内皮機能障害を認めた。虚血肢の重症度と血管内皮機能障害は必ずしも相関は認めなかった。血行再建後の症例を今後増やしていきたい。26基-14:肺虚血再潅流傷害の機序解明と新規制御法の確立研究代表者:花崎 元彦(麻酔・集中治療医学3) 肺移植術後管理において大きな問題は虚血再潅流傷害である。また移植術に限らず通常の肺切除術でも術後肺合併症の発症には、手術操作や一側肺換気に引き続く低酸素性肺血管攣縮によって起こる虚血と、その解除による再潅流が影響していると考えられている。 このように、呼吸器外科手術の周術期安全性を向上させるためには虚血再潅流傷害のメカニズムの解明が重要である。 これまでに我々はラット肺虚血再潅流傷害時に低分子量G蛋白RhoAとその下流のシグナル分子Rho-kinase(ROCK)によるRhoA-ROCK系およびCPI-17を介したシグナル伝達が亢進していることを示した。今回は同じモデルを用いて、虚血再潅流傷害に関連するマイクロRNAの同定を行った。 雄性 Wistar ラットを3群(対照(C)群、虚血再潅流(I/R)群、セボフルラン(S)群)に分けた。 ペントバルビタールで麻酔し動静脈路確保、気管切開を行った後に人工呼吸を開始した。胸骨横切開で両側開胸し、左肺門部をクランプ(=虚血、1時間)、解除(=再潅流、1時間)の後に左肺を摘出しRNA later液中に保存した。C群は開胸操作のみを行った。またS群はI/R群と同様のプロトコルだが気管切開後の全行程で2%セボフルランを付加した。 現在、3群から得られた肺組織を用いて、マイクロRNA解析を行っているところである。S35

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です