医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-49:Verify Now®を用いた血小板機能からみた術前抗血小板剤中止のタイミング研究代表者:種本 和雄(心臓血管外科学) 現在、各種抗血小板剤投与を受けている患者が増加しているが、エビデンスに基づいた術前休薬期間は示されていない。従来の比濁法による検査は操作が煩雑で検査時間も長く、臨床応用には至っていないのが現状である。しかし近年、迅速で簡便かつ正確な血小板機能測定装置VerifyNow®システムが登場し、内服中のモニタリングが可能となった。本研究は同システムを用いて術前薬剤中止後の血小板機能回復経過から至適術前中止時期を明らかにすることおよび術直前の血小板機能と術後出血量の関係を検討することを目的に行うものである。 平成26年度は、クロピドグレルを内服中の予定手術患者12例を新たに加え、VerifyNow®を用いて最終内服日から手術当日までのPRU値および抑制率を経時的に測定し、血小板機能回復経過から至適中止時期を検討した。結果、休薬後3日でPRU値がcut off値を上回り、血小板凝集能が回復していることが示された。またVerifyNow®を用いた術前の血小板機能と術後出血量との関連を調べる研究において、今年度は新たに大動脈弁置換術14例、僧帽弁形成術6例、心拍動下冠動脈バイパス術7例を追加して検討を行った。結果として各術式においてARU値で軽度の逆相関を認めたが、明らかな有意差は認められなかった。 以上の結果から、本邦における抗血小板薬の術前休薬期間は短縮可能であり、VerifyNow®システムによる術前血小板機能評価により術後出血量を予測できる可能性があると考えられた。26挑-5:Caveolin-1が内皮由来過分極因子産生に関与するか否かについての評価研究代表者:矢田 豊隆(医用工学)背景:マウス腸間膜動脈において血管内皮caveolin-1が内皮由来過分極因子(EDHF)としての過酸化水素産生に重要な役割を示す事がこれまでに知られている。この過酸化水素産生メカニズムにおいて、糖尿病性冠動脈閉塞モデルにおいて一酸化窒素(NO)の代償機構としてEDHFを介した拡張反応を含むか否かについて実験を行った。方法:イヌ心外膜側、左冠動脈前下行枝(LAD)と回旋枝の間の側副小動脈(>100 μm)と細動脈(<100 μm)は、CCD生体顕微鏡によって観察した。実験は、90分のLAD閉塞後に行われ、以下の3つの条件下、(i) コントロール群, (ii) 糖尿病群、 (iii) 糖尿病+KCa++ channel 拮抗薬投与群 (apamin+charybdotoxin)で行った(各群6匹)。心筋内caveolin-1、H2O2、eNOS濃度は、ELISA法によって、計測を行った。結果:LAD(導管)レベルのcaveolin-1は、コントロール群と糖尿病群の間で有意差を認めなかった。しかし、コントロール群の微小血管とLAD(導管)レベルの比較を行った所、微小血管において有意な増加を認めた。NOを介した小動脈におけるブラジキニンに対する血管拡張反応は、コントロール群に比べ、糖尿病群において有意な血管縮小を認め、リン酸化eNOSも同様に低下した。細動脈における血管拡張反応は、コントロール群に比べ、糖尿病群において拡張反応は減少するも残存血管拡張反応を認め、H2O2産生濃度も維持された。残存血管拡張反応は、KCa++ channel 薬投与により、消失した。結論:生体内イヌ急性冠動脈閉塞時NOを介した小動脈の血管拡張反応は、糖尿病で障害され、その反応は、細動脈によるEDHF/H2O2 によって、代償された。S34川 崎 医 学 会 誌

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