医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-50:僧帽弁腱索断裂の電子顕微鏡による原因解明研究代表者:山澤 隆彦(心臓血管外科学) 僧帽弁閉鎖不全症は我が国では成人の4-5%とされている。しかし僧帽弁閉鎖不全症は原因が必ずしも全ては解明されていない。僧帽弁の完全な閉鎖と開放を維持するためには僧帽弁弁尖、腱索、乳頭筋、弁輪、左房、左室を合わせた協調運動が不可欠である。これらの1つでも異常を認めると弁機能不全となり逆流を認める。これらの機能障害を修復する方法として、弁輪拡大に対しては弁輪の縫縮、腱索の断裂に対しては、人工腱索による再建、余剰弁尖については弁尖切除術を行い、新たな僧帽弁複合体(mitral complex)の構造を確立する。今回我々はこのmitral complexに起こった異常を解明する前段階の研究として、力学的原因で起こったと考えられる人工弁縫合糸断裂に対して走査型電子顕微鏡を用いて検討した。 今回検討した症例は弁置換術に用いる弁糸の離断により再手術を必要とした2症例の弁縫着糸である。検体である弁糸より余剰に糸表面に付着していた組織を十分に除去した後、走査型電子顕微鏡を用いて弁糸離断面およびその周囲の検討を行った。走査型電子顕微鏡による画像所見は、縫合糸に水平方向に走る多数の亀裂を確認することが出来た。また糸の長軸方向にも亀裂を確認することが出来た。今回我々は、弁縫合糸離断の原因を解明する為に、走査型電子顕微鏡を用いて観察を行い弁糸の亀裂を確認した。今後、僧帽弁複合体のそれぞれの異常発症部位の検討を行うことにより僧帽弁形成術の術式の改良に有用となる情報を得る可能性がある。26基-8: 心エコー図による大動脈弁機構の評価-3次元経食道心エコー図法による大動脈弁輪径の計測-研究代表者:玉田 智子(循環器内科学)【背景】外科的弁置換術(SAVR)が施行困難な高リスク重症大動脈弁狭窄に対して、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)が新たな治療法として施行可能となった。SAVRでは術中に直視下で人工弁サイズを決定できるが、TAVRにおいては術前の経胸壁心エコー図(TTE)および経食道心エコー図(TEE)による計測値を用いてバルンや人工弁のサイズを決定する必要がある。【目的】TTEおよびTEEで計測した大動脈弁輪径(An)の妥当性について検討すること。【方法】対象はSAVRを施行された大動脈弁膜症28例。術前に2DTTE、2DTEE、3DTEEで計測したAnと術中にvalve ring sizerを用いて計測したAnを比較した。【結果】2DTTEおよび2DTEEで計測したAnと比較し、3DTEEで計測したAnは術中の計測値と良好な相関を示した(p<0.05)。【結語】3DTEEによりAnを正確に評価可能であり、TAVRにおいても術前術中評価に有用と考えられた。S33

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