医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-46:てんかん原性形成に対するリアノジン受容体の関与研究代表者:宮本 修(生理学2) てんかん患者の約20%は薬剤に反応しない難治性てんかんであり、てんかんを根治する抗てんかん原性を有した治療法の開発が待たれている。今回我々は、てんかん原性形成に関与するCa2+動態に着目した。けいれん時にはシナプス間に大量のグルタミン酸が放出され、これによって細胞内にCa2+が流入する。このCa2+は小胞体膜上にあるリアノジン受容体(RyR)に結合し、細胞内Ca2+濃度をさらに上昇させる。このRyRによる過剰なCa2+濃度の上昇がてんかん原性の形成に結びつく可能性について検討した。ラット(8週齢、♂)の扁桃体に電極を埋め込み、1日1回電気刺激した(150~300μA)。刺激を繰り返すことで徐々にけいれんの程度が強くなり、10日ほどで大発作を呈するようになった(キンドリング動物)。てんかん原性形成の途中段階であるステージC2でラット脳を摘出し、切片を作製してRyR1~3について免疫染色を行った。C2群の海馬CA1領域において、RyR1およびRyR2の免疫反応がsham群と比較して強く表れ、CA3および歯状回領域では変化は見られなかった。一方、RyR3は、いずれの領域についても群間に差はなかった。今後、各ステージ段階でのRyR発現を免疫染色やウェスタンブロットにて詳細に検討し、さらに、RyRのアンタゴニストであるダントロレンを持続投与することでてんかん原性形成に変化が見られるかを検証する予定である。26基-62:骨形成タンパク質(BMP)産生細胞の自律分化制御機構の解明研究代表者:西松 伸一郎(分子生物学1)【目的】 BMPが属するTGF-βファミリーの分子は、幹細胞の分化を制御し、動物胚の体軸にそった形態形成に関与する。我々は、両生類胚におけるBMPタンパク質の翻訳後の制御機構を解析している過程で、BMPタンパク質前駆体の切断が、BMP産生細胞の分化を転換し、細胞自律的な分化制御と関連していることを発見した。前駆体を切断するタイミングが、BMP産生細胞の細胞周期の長さを規定して下流の遺伝子発現を調節している可能性を検証するため、本研究ではマウス由来の培養細胞株を用いてBMP-3b前駆体の切断によるin vitro分化誘導実験系を構築することを目的とした。【方法】 C2C12細胞、10T1/2細胞にBMP-3bとBMP-3を発現させ、BMP-3b前駆体の切断の相違により変動する細胞内エフェクターの解析を行った。また細胞内エフェクターの変異体を利用して、シグナル経路の解析を行った。【結果・考察】マウス胚由来の培養細胞株にBMP-3bとBMP-3を発現させ、BMPシグナルの細胞内エフェクターであるSmad群の発現パターンを解析した結果、BMP-2ならびにアクチビン/TGF-βとも異なる回路でシグナル伝達が制御されていることが判明した。両生類胚では、BMP-3bとBMP-3でOtx2からNkx2.5に転写因子の発現がシフトするが、マウス培養細胞内で同様に変化する標的遺伝子を解析しているところである。この実験系を確立することにより、FRETセンサーを使ってBMPタンパク質前駆体の切断と細胞周期との関連を解析することが可能となる。S28川 崎 医 学 会 誌
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