医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-20:脳梗塞後の運動野再構成におけるERKリン酸化の役割研究代表者:岡部 直彦(生理学2) 運動野障害時にリハビリテーションを行うと運動野のリマッピングがおこることがわかっているが、その分子メカニズムは分かっていない。本研究では運動学習や記憶の形成に重要な働きをすると考えられているERKのリン酸化が脳梗塞後の運動野のリマッピングにどのような役割を果たしているのかを調べた。実験では、ラットをPT群およびPT+Rehab群に分け、梗塞をCaudal Forelimb Area (CFA)に作成し、梗塞前、梗塞後1、4、7、14、28日後にタンパクサンプルを採取しウエスタンブロットによりERKのリン酸化を定量化した。また、梗塞後にERKの阻害薬であるFR180204をミニポンプで4週間投与し、運動野前肢領域の大きさがどのように変化するかを調べた。ERKのリン酸化は梗塞1日後には減少し、梗塞14日後をピークに増加する傾向を示した。しかし、PT群とRehab群の間には差は見られなかった。ただし、FR180204の投与によっては運動野前肢領域が減少する傾向がみられた。この結果はERKのリン酸化は脳梗塞後の運動野のリマッピングに何らかの作用を及ぼしている可能性はあるが、リハビリテーションにより引き起こされる運動野の変化には関与していないことを示唆している。26基-45: The mechanism of how bone marrow derived mesenchymal stem cells (BMSCs) work on intracerebral hemorrhage by intravenous infusion      (脳出血に対する骨髄由来間葉系幹細胞の静脈内投与の効果とその機序)研究代表者:陸 豊(生理学2) 間葉系幹細胞(MSCs)は神経幹細胞に分化可能であり、脳卒中の自家移植治療の細胞供給源として注目されている。実際にラットの脳出血発症部位に直接投与されたMSCsが内因性神経の再生を促進し、機能を回復させた報告がある。しかし脳内への直接投与の臨床応用は侵襲性が高く容易ではない。本研究では、自家血を線条体に注入して作製した脳出血モデルラットで、MSCsの末梢静脈内投与による治療効果とその機序を検討した。1.骨髄由来MSCsの培養方法の確立:成体ラットの大腿の骨髄より回収したMSCsを培養後、CD90やCD45など複数のbiomarkersによりMSCsの特徴を確認した。2.他の自家細胞供給源との比較: MSCsと、他の注目されている細胞供給源である嗅粘膜由来神経幹細胞とを比較し、増殖能力、神経細胞への分化能、細胞の状態などの特性の差異を免疫細胞染色にて確認した。MSCsは嗅粘膜由来神経幹細胞に比較して増殖能力が強い、また培養期間が短いといった、移植に有利な特性を有する傾向が見られた。3.脳出血に対する骨髄由来MSCsの移植効果の検討:細胞治療では、治療開始のタイミングや細胞の投与量が移植効果に影響するため、現在、予備実験で最適な投与条件を探索中である。投与条件決定後にMSCsの移植効果を行動学試験と組織染色法にて評価する予定である。S27

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