医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-79:プロサポシン過剰発現による網膜色素変性症モデルマウスのプロテオーム解析研究代表者:小野 公嗣(解剖学)【背景】プロサポシン(PSAP)はライソゾーム内でのスフィンゴ糖脂質の分解に必要なサポシン(SAP)の前駆体蛋白質であるとともに、細胞内外において独自の生理活性を持つとされている。最近、網膜色素変性症の原因遺伝子のひとつであるセマフォリン4Aが網膜色素上皮細胞においてPSAPと相互作用することが示された。本研究では、PSAP 欠損マウス(PSAP-KO)およびPSAP過剰発現マウス(PSAP-Tg)を用いて網膜におけるPSAPの機能の解明を目指した。【方法と結果】PSAP-KOおよびPSAP-Tgの網膜について、電子顕微鏡による病理組織学的解析を行った。PSAP-Tgでは、出生時には正常であった視細胞が日齢21頃から脱落し始め、日齢35までにはほぼ完全に脱落した。視細胞の細胞内小器官が存在する内節部分の観察により、PSAP-Tgでは膜状封入体が多数認められ、形態異常を示すミトコンドリアが多数存在するのに対し、PSAP-KOでは異常所見に乏しいことが判った。対照的に、網膜色素上皮細胞では、PSAP-KOに膜状封入体を多数認め、PSAP-Tgでは異常所見に乏しかった。次に、PSAP強制発現が引き起こす視細胞脱落メカニズムを解明するために、PSAPの相互作用タンパク質の発現解析を行った。その結果、sortilinの発現量がPSAP-Tgにおいて減少していることがわかった。【考察】以上の結果から、PSAPの過剰な細胞内蓄積は一次的に視細胞死を惹起し、そのメカニズムにsortilinの発現低下が関与している可能性が示された。現在、網膜におけるPSAPと相互作用する新しい分子の探索を進めている。26挑-7:ヨーソ酸ナトリウム(NaIO3)を用いた薬剤性片眼網膜変性モデルの作製研究代表者:鎌尾 浩行(眼科学1)【目的】加齢黄斑変性へのヒトiPS細胞由来網膜色素上皮(hiPSC-RPE)移植は、障害されたRPEの代替細胞を移植する事が目的であるが、現在これを評価しうる動物モデルはない。そこで上記の点を解決するために、薬剤による片眼のRPE障害モデル動物の作製を試みた。【方法】8週齢のオスのSDラットの右眼に、0.005、0.01、0.02㎎/μlのヨウ素酸ナトリウムを2μl硝子体注射し、投与後、7、14、28日で眼球を摘出した。評価は、組織学的な網膜の厚さ[網膜外層(ONL)と網膜内層(IRT)]と、2光子励起顕微鏡による細胞形態と自発蛍光の変化を評価した。【結果】コントロールのONLは65μm、IRTは151μmであった。投与後28日において、0.005㎎/μl投与群はONL・IRTともに変化は認められなかったが、0.01㎎/μl投与群はONLが5.8μm、IRTは144μmとONLの菲薄化を認め、0.02㎎/μl投与群はONL・IRTともに消失した。また0.01㎎/μl投与群のONLは経時的に減少し、特に投与後7日から14日に大きな変化を認め、細胞形態の不整や自発蛍光の減弱も同時期に認めた。いずれの濃度においても、非投与眼には変化を認めなかった。【結論】ヨウ素酸ナトリウムの硝子体注射により、片眼の網膜色素上皮障害モデル動物の作製に成功した。今後はhiPSC-RPE移植実験のモデル動物として用いるために、最適な移植時期を模索する予定である。S24川 崎 医 学 会 誌

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