医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-12:膵β細胞ブドウ糖毒性の分子機構の解明研究代表者:金藤 秀明(糖尿病・代謝・内分泌内科学) 2型糖尿病の特徴は、膵β細胞におけるインスリンの生合成、分泌の低下および肝臓や末梢組織でのインスリン抵抗性である。そして臨床上最も大きな問題点は、高血糖が持続すると、β細胞におけるインスリン生合成および分泌障害はさらに顕著化し、また肝臓や末梢組織でのインスリン抵抗性もさらに増加するという悪循環に陥ることであり、これは高血糖毒性として臨床的にも広く知られている。 本検討においては、肥満2型糖尿病モデルであるC57BKLJ-db/dbマウスを用いて、(インスリン抵抗性改善剤である)チアゾリジン誘導体および(インクレチン製剤である)GLP-1受容体作動薬を、単剤であるいは併用して、糖尿病の病態早期と進行期に介入することで、病態の進展とともにこうした薬剤の高血糖毒性軽減効果や膵β細胞保護効果がどのように変化するかを検討した。その結果、病態早期に治療介入すれば、インスリン生合成、グルコース応答性インスリン分泌、様々なβ細胞特異的因子の発現量、さらにβ細胞massおよびβ細胞増殖能などが回復したが、同じ薬物でも進行期に治療介入すると、その効果は極めて乏しくなっていた。こうした結果は、膵β細胞保護を考えた糖尿病治療を早期から施行することの重要性をあらためて示唆するとともに、β細胞機能障害進展抑制に向けた治療戦略の構築に貢献する可能性を有するものと考えられる。S18川 崎 医 学 会 誌

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