医学会誌 第41巻 補遺号
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26特-1:TGF-β 阻害戦略による抗加齢・健康寿命延伸医療の創出研究代表者:砂田 芳秀(神経内科学) マイオスタチンは骨格筋量を負に制御するユニークなTGF-β分子で、われわれはマイオスタチン活性亢進による筋ジストロフィーの筋萎縮機構を明らかとした(JCI161、2006)。本研究は加齢をマイオスタチン/TGF-βの恒常性破綻と捉え、その阻害医薬の開発に取り組んでいる。平成26年度は独自の転写アッセイ系によってマイオスタチンを血中で生理的に阻害する240アミノ酸残基からなるプロドメイン蛋白質から、阻害活性中心(IC:29アミノ酸残基)を同定した。このICが、リガンド阻害ばかりでなく、細胞表面でリガンド-受容体結合を阻害する新たな薬理機構を発見しPCTを出願した(PCT/JP2014/052345)。また、マイオスタチン受容体に対する低分子阻害化合物を、ジストロフィン欠損筋ジストロフィー及びサルコペニアモデルマウスに経口投与した。筋ジスマウスの筋萎縮と筋張力低下は改善し壊死・再生・線維化・脂肪化など“ジストロフィー変化”も軽減した。またサルコペニアマウスでは筋萎縮が改善し、腎硬化症と骨粗鬆症が改善して寿命が延長した。現在、この老化モデルマウスとプロドメインを高発現するマイオスタチン活性阻害マウスを交配して、サルコペニア・腎硬化症・骨粗鬆症に対する改善の可否と、寿命延長の分子細胞機構を解析している。マイオスタチン/TGF-βを標的とした新しい抗加齢・健康寿命延伸医薬を発信したい。26特-2:インスリン抵抗性宿主における大腸発がんメカニズムの解析研究代表者:鶴田 淳(消化器外科学)(背景)TIGAR(TP53-induced glycolysis and apoptosis regulator)はペントースリン酸経路を活性化し癌細胞の代謝性要求に応えるp53下流遺伝子である。遺伝子欠失(KO)マウスを用いた研究によりTIGARは大腸発がんを促進する因子であることが報告される一方、ラットのアルコール性肝障害モデルにおいてその発現はインスリン抵抗性につながると報告されている。(目的)インスリン抵抗性宿主における発がん経路でのTIGARの役割を検証する。(方法)In vitro:TIGAR stable cell line、inducible cell lineを用いてインスリン刺激下でのPI3K/Aktシグナル伝達経路の反応を検証する。In vivo:①AOM、DSSによる炎症関連2段階大腸発がんモデルの作成(ICR)。介入群としてメトホルミン投与(M)。②マウス高脂肪食負荷によるインスリン抵抗性モデルの作成(B6、KK-Ay)しTIGARの臓器特異性を解析。(結果)In vivo①;腫瘍発生率(%);ポジテイブコントロール (P)群:介入(M)群=40:20(p=0.49)、1匹あたりの腫瘍数;P群:M群=1:0.2 (p=0.14)。体重推移はネガテイブコントロール(N1)群、M群はP群に比べて有意に増加した。免疫組織学所見ではTIGAR発現は腫瘍部と正常組織部間で有意な差は認めなかった。In vivo ②;現在解析中である。In vitro;U2OS TIGAR stable cell においてTIGARによりIR-βが発現増強される可能性とH1299 TIGAR inducible cellにおいてIR-β、p-IR-β、Akt、p-Aktが発現増強される可能性が示唆された。(結語)当該テーマについてはIn vivo、In vitroともに未だ検証中の段階である。今後TIGAR KOマウスを用いてのインスリン抵抗性獲得モデルの作成等を行い検証する予定である。― 特別推進研究 ―S15

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