医学会誌 第40巻 補遺号
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25挑-2:運動器再建を目的とした画像支援システムを用いたオーダーメイド医療研究代表者:森 啓弥(スポーツ・外傷整形外科学) 筋肉、腱、靭帯、骨、関節などの運動器構成体は、完全なる均衡のもとに配置され、自分の意思に従って機能させることにより、複雑な身体運動が可能になる。外傷や加齢により運動器の変形、変性が生じた場合、Quality of Life(生活の質)をも悪化する。75歳以上の高齢者で介護が必要となった要支援者のうち3人に1人は「関節疾患」や「骨折・転倒」などの運動器障害である。これらの障害に対して、早期に低侵襲で、正確な運動器機能を再獲得させることは重要である。CT やMRI 等の医療用画像による患部モデリングと術前計測/手術計画機能は関節変形を3次元的に評価することができるようになり、その応用として人工関節手術にはコンピューター支援ナビゲーションが導入され、正確な手術を提供できることが報告されている。一方で、このナビゲーションシステムは海外製で高価であり、また内部システム環境はブラックボックスであるため、例えば患者個人に合わせた医療提供(オーダーメイド医療)が困難である。国内においては、共同研究者である阿部信寛教授らによって、以前より東京大学工学部、地元の医療機器メーカーをはじめとする開発グループとの医工連携、産学連携により人工膝関節置換術を対象にした手術支援ロボットの開発を行っている。我々が自前開発したナビゲーションシステムが損傷運動器を再構築する支援装置となりうるのか、徐々に症例を増やしつつあるが、成果、評価できる症例数まで達していない。25基-35: 新しいエネルギーデバイス(Vessel Sealing System)の導入後の、肺癌根治手術現状とその安全性に関する検討研究代表者:最相 晋輔(呼吸器外科学) 胸腔鏡手術は内視鏡やその他手術機器の開発・進歩により広く普及し、現在では肺癌手術の60%以上で胸腔鏡が使用されている。胸腔鏡下肺癌手術において、肺動静脈処理やリンパ節郭清等において従来の開胸手術よりも高度な技術を要し、その安全性と教育・トレーニングシステムの確立が課題とされてきた。近年、エネルギーデバイス(Vessel Sealing System)の導入により血管処理が簡便かつ確実に可能となった。当科では、2011年より『LigaSureTM(COVIDIEN社)』と『EnSeal(ETHICON社)』という2種類のエネルギーデバイスを使用している。しかし、これまでにエネルギーデバイスの安全性・有効性や、使用前との比較検討は殆ど行われていない。今回、これらエネルギーデバイスの有用性を実証し、適切な使用方法を確立することを目的として、その使用状況やトラブルの有無等について前向き検討を予定した。しかし手術器機の開発・進歩は著しく、エネルギーデバイスの改良や新機種の導入などが相次ぎ、前向き試験を行った場合により新たな機器の使用を妨げることが危惧される状況である。このため研究計画を変更し、これまでの肺癌根治手術(選択的または系統的リンパ節郭清を伴う区域切除以上の肺切除)症例を対象として,エネルギーデバイス導入前後で周術期因子を後ろ向きに比較検討し、エネルギーデバイス導入による利点や問題点を検討することとした。今後研究プロトコールを変更して検討を行い、当日にその結果を提示する。S81

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