医学会誌 第40巻 補遺号
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25挑-5: ドクターヘリ患者搬送における情報のICT化-デジタルペンを用いた看護記録導入のための研究研究代表者:井上 貴博(救急医学) ドクターヘリ搬送時における患者情報とし当院では3種類の書式を使用している.ヘリ要請時に院内にて作成する要請依頼票、出動後のヘリ機内、現場、患者搬送中などに記載する搬送看護記録、そして帰還後にこれらを詳細にまとめたデータベースである. これらを一元化し、帰還後のデータベース作成作業を容易にするためITシステムの導入を試みた.まずデジタルペンを導入、従来の記録をデジタル化する事から開始した.このシステムはスマートフォンを利用した患者情報共有システムを構築し、現場活動中にヘリスタッフが記載した看護記録や患者情報等を院内でほぼ同時に参照できるようになる. このシステムの実用化に向けて、まず搬送看護記録用紙をデジタルペン対応用紙で作成、実際にヘリ機内運用が可能か検討した.研究内容は、デジタルペンからスマートフォンへのBluetoothによる電波通信(2.4GHz帯)およびスマートフォンの3G回線通信と航空機への影響の調査とそのシステムのシミュレーションである. 作成したデジタルペン対応搬送看護記録用紙は、現行のものと瓜二つで、日常業務に支障を来さなかった.またシミュレーションの結果、ドクターヘリ内でのデジタルペン(Bluetooth)使用に対してドクターヘリ機体や計器、搭載ME機器への電磁干渉が生じるとは極めて考えにくい結果が示された.25基-87:ICUにおけるインスリン療法支援システムの試作-血糖動態モデル-研究代表者:小笠原 康夫(医用工学) 最近、血糖コントロールの方法として、インスリン投与量の調整を古典的な制御理論であるPID制御の概念に基づいたコンピュータによる補助を試みた報告がある。血糖コントロールの厳密化には、必然的に血糖測定とインスリン投与速度の調整が必修になるが、実施には医療現場の負担の増加も無視できない点が問題である。本研究では、インスリン投与量設定のアルゴリズムの開発とそれを応用した支援システムの試作を目的として投与量算定のためのシステムを試作した。最終的には、重症患者の治療開始直後の急性期と安定状態への移行期及び安定期の3フェーズに分けて、支援・自動化アルゴリズムを開発した、急性期は、患者の状態として初期の血糖値とそれに対する医師の指示によるインスリン投与量の情報収集を行うとともに、短期間に得られた血糖値データに基づいて投与量を設定し、必要なデータ蓄積ができた段階から、収集した血糖値、及びインスリン投与量を用いて血糖動態を推定する回帰モデルを作成することにより血糖動態の予測を行った。回帰モデルは、血糖測定ごとに更新して、血糖動態の変動に追従可能なシステムとしている点に特色がある。シミュレーションによる模擬実験を実施して、従前の血糖コントロールアルゴリズムと同様な血糖コントロールが可能であることが分かった。S80川 崎 医 学 会 誌

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