医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-69:Sphingosine-1-phosphate receptors 3,5のリンパ造血系腫瘍における発現と治療への応用研究代表者:定平 吉都(病理学1) Sphingosine-1-phosphate receptor (S1PR) は、さまざまな細胞の増殖、生存、移動などに関与している。今回われわれは、S1PR、特にS1PR3とS1PR5の悪性リンパ腫における発現を検討し、これらを標的とするchemical modulatorの治療応用の可能性を探索した。【材料と方法】45症例におけるリンパ節(新鮮材料またはS1P3とS1P5のmRNAの発現をqRT-PCRで、また蛋白レベルでの発現をパラフィン切片を用いた免疫組織化学で調べた。【結果】リンパ節でのS1PR3 mRNA の発現量はS1PR1 mRNA (p=0.001)およびsphK1 mRNA(p=0.003)の発現量と相関していた。悪性リンパ腫においては、S1PR3 mRNAの発現量は血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)において有意な増加を示した(p=0.023)。正常組織のパラフィン切片の免疫組織化学による検討では、S1PR3は、血管やリンパ管内皮のみならず血管周囲細胞や血管平滑筋細胞、線維芽細胞、筋線維芽細胞、脂肪細胞、平滑筋細胞、心筋細胞に発現していた。AITLにおいて、S1PR1、S1PR3、CD31の免疫組織化学の結果を比較すると、CD31は血管内皮細胞の全周に発現していたが、S1PR3およびS1PR1はapical siteにのみ陽性となった。一方、S1PR5を高発現するリンパ腫は、症例数は少数であるがNK/T細胞リンパ腫やHTLV-1陽性T細胞株であるHPBで高発現がみられた。【考察】AITLは樹枝状の高内皮細静脈が著しく増生し多種の浸潤細胞みられることを特徴とするリンパ腫であるが、S1PR3がS1PR1とともに高内皮細静脈の増生に関与している可能性がある。今後、AITLにS1PR3のchemical modulator(FTY720など)の治療応用が検討されてよいかもしれない。25基-92:細胞外酵素ADPリボシルシクラーゼファミリー欠損マウスの機能解析研究代表者:石原 克彦(免疫学) 初期の解析はSPF飼育室でCD157ノックアウトマウス(CD157KOと略)、CD38/CD157ダブルノックアウトマウス(CD38/CD157DKO)と野生型対照C57BL/6Jの3系統の比較で行われ、6ヶ月齢のCD38/CD157DKOにおける小腸の延長(約16%)という予想外の結果を得た。CD38/CD157DKOの対照として必須のCD38KOはジャクソンより凍結胚で購入して個体化し、クリーンエリア飼育室へ搬入されたので、同一環境(クリーン)での4系統の3、6、9、12ヶ月齢における表現型解析を進めた。個体数は少ない(n=2)もののクリーンエリアでもCD38/CD157DKO(9ヶ月齢♂)の小腸延長(約36%)が認められた。しかし小腸のHE染色では明らかな病理学的組織異常は認められなかった。4系統全てで3個体以上の解析結果が得られている3ヶ月齢ではCD157KO、CD38KO、CD38/CD157DKOの小腸の長さは野生型と比較して±10%以内の差しかなかった。この時期に腸間膜リンパ節の細胞数がCD38/CD157DKOにおいて2倍以上に増加していた。4系統で体重、脾臓細胞数に顕著な差は認められなかった。ADPリボシルシクラーゼの欠損が加齢により小腸の長さや粘膜関連リンパ組織の細胞数に影響することが明らかとなった。腸管の免疫染色とRNA用の検体収集を進めている。S71

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