医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-93:頭頸部癌患者における口腔内細菌叢についての検討~放射線治療による影響研究代表者:兵 行義(耳鼻咽喉科学) 頭頸部癌患者においてQOLを温存する目的で放射線照射にて治療する場合が多い。しかし、放射線照射における副作用の一つに口腔内乾燥症があげられる。照射を行うことにより唾液腺にダメージを受け、唾液量が減少し様々な症状をひきおこす。口腔内常在細菌叢の変化し病原細菌が検出される場合もある。そこで今回当院倫理委員会承認のもと「頭頸部放射線治療に伴い口腔内乾燥症におけるピロカルピン塩酸塩の投与のタイミングによる臨床効果の比較検討」の一環として、放射線治療患者に対して検討したので報告する。 症例は2013年4月~2014年3月までに当院当科で放射線治療を行った症例8例に対して検討を行った。検討項目としては①VAS SCALEを用いた口腔内乾燥状態、摂食、会話、睡眠の障害を評価した。②唾液量、③口腔内うがい液における細菌叢の確認を行った。症例の内訳は喉頭癌4例、上咽頭癌2例、下咽頭癌1例、舌癌1例であった。 結果として放射線照射を40Gy/20Fr 経過をした以降、VAS SCALEや唾液量に皮膚障害、粘膜障害も悪化した。口腔内細菌叢は喉頭病変に対してはあまり変化がないが、舌、上咽頭、下咽頭病変に関しては常在細菌叢以外の菌種が検出され、唾液量の低下により口腔内細菌叢の変化がある可能性が示唆された。しかし、症例数が少ないため、今後も症例を追加して検討したいと思っている。25基-23:ヘルペスウイルス感染に伴う表皮ケラチノサイトの変化と水疱形成メカニズムの解析研究代表者:山本 剛伸(皮膚科学) 単純ヘルペスウイルス(HSV)・水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)感染症は,水疱形成をきたす特徴があるが,そのメカニズムは全く解明されていない. ウイルス側要因(ウイルス複製を介して皮疹の拡大を狙う・宿主に認識されない環境を形成する)と宿主側要因(皮疹を最小限に食い止める)の絶妙なバランスにより病変が形成されることが予想される.①ウイルス側要因:HSVでは細胞周期を止めてアポトーシスに導くDNA損傷応答(DDR)の惹起がウイルス複製に必要で,VZVでは逆にDDRの惹起を阻害して宿主細胞のアポトーシスを阻止しようとする差異がin vitroで確認された.②宿主側要因:細胞傷害性T細胞(CTL)の皮膚病変部への浸潤とアポトーシス誘導の状態を健常人と免疫不全者間で比較検討を行った.HSV/VZV感染症ともに病変部の炎症細胞浸潤は健常人より免疫不全者のほうが少なく,浸潤細胞の多くはCTLであった.アポトーシス誘導因子の解析では,免疫不全者はBax/Bcl-2,Fas/FasLの系でアポトーシス機構不全になることが示唆された. 免疫不全状態では,アポトーシス誘導因子およびCTL関連細胞傷害性分子の発現低下により健常人と比較して大型の水疱を形成し,難治となる.またVZV感染症よりHSV感染症のほうが,病変部のアポトーシスをきたしやすい環境を形成していることが考えられた.S64川 崎 医 学 会 誌

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