医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-54:好中球NADPHオキシダーゼの発現解析研究代表者:栗林 太(生化学) ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)であるGCN5はヒストンのアセチル化を介して、様々な遺伝子のエピジェティックな発現を制御する。本プロジェクト研究ではGCN5が活性酸素の生成とNADPHオキシダーゼの1つであるgp91phoxの発現に与える影響に関して解析した。GCN5のノックアウト細胞では、活性酸素の生成は見られなかった。その原因を探るために活性酸素生成タンパク質のmRNAを解析するとgp91phoxの発現のみが低下していた。ただしGCN5類似HATであるPCAFによるgp91phoxへの関与は弱かった。次にIFNγによる分化誘導とともに活性酸素やgp91phoxの誘導が起こる培養細胞系を利用してGCN5の役割を調べたところ、GCN5がIFNγ依存性にgp91phoxの転写部位に結合していることがCHIP assayにより分った。また、GCN5がアセチル化するヒストンにも特異性が見られた。このGCN5の関与はGCN5特異的な阻害剤であるCPTH2により阻害されたことからも、GCN5はgp91phoxをpositiveに制御することにより、活性酸素の生成に寄与していると考えられる。25基-16: キャピリアMAC抗体ELISAキットの肺Mycobacterium avium complex (MAC)症と他の呼吸器疾患との鑑別診断への有用性に関する検討研究代表者:小橋 吉博(呼吸器内科学)【目的】肺MAC症の診断基準において、細菌学的基準を満たさないために診断に苦慮する症例が多数あり、こうした症例に対して、他の呼吸器疾患との鑑別診断にキャピリアMAC抗体ELISA法が有用か検討すること。【対象と方法】対象は、結節・気管支拡張型肺MAC症が疑われ、喀痰が出ないために確定診断の目的で気管支鏡検査を実施した66例とした。これらの症例を気管支鏡下検体からMACが分離された40例(分離群)とMACが分離されなかった26例(非分離群)に分けて、臨床所見やMAC抗体価陽性率などを比較検討した。【結果】分離群ではMAC抗体価が31例(76%)で陽性反応を示したのに対して、非分離群ではMAC抗体価は4例(15%)のみに陽性反応を示していた。最終的には、結節・気管支拡張型肺MAC症に対するキャピリアMAC抗体ELISA法の感度は76%であったのに対して、特異度は85%と比較的優れた成績が得られていた。肺MAC症の確定診断が得られた症例の中で偽陰性を呈した症例は9例みられたが、これらは病変の拡がりが小さい傾向があったものの、基礎疾患の有無やリンパ球数、アルブミン値などによる影響はみられなかった。【考察】肺MAC症の中で最も多いとされる結節・気管支拡張型肺MAC症の診断困難例においてもキャピリアMAC抗体ELISA法による診断精度は比較的優れていた。特に、陽性反応を示した場合には、肺MAC症の可能性が高いことから、今後、肺MAC症の診断基準に一つの重要な参考所見として考えていく必要性があると思われる。S61

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