医学会誌 第40巻 補遺号
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25ス-3:DKK3をターゲットとした頭頸部扁平上皮癌の転移抑制に関する研究研究代表者:片瀬 直樹(分子生物学1(発生学)) DKK3はreduced expression in cancer (REIC)としても知られ、脳腫瘍、肺癌、消化管腺癌、悪性黒色腫を含む多種類の腫瘍で発現が減弱している。また、DKK3発現のない腫瘍細胞に強制発現させるとアポトーシスを誘導することから、癌抑制遺伝子と考えられている。われわれはこれまでに頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)ではDKK3が大多数の症例で発現しており、DKK3発現群は予後不良であることを見いだし、HNSCC由来細胞株でDKK3発現をノックダウンすると腫瘍の浸潤性、遊走性が減少することを報告している。 本研究では、種々の腫瘍細胞株とHNSCC由来細胞株を用いてmRNA発現とタンパク発現を比較検討し、低発現株へのDKK3の強制発現と、高発現株へのDKK3のノックダウンを行った。DKK3 mRNAおよびタンパクはHNSCCおよび食道癌のみに認められ、その他の腫瘍ではほぼ消失していた。DKK3低発現株への導入は有意にmRNA発現を増加させたが、タンパク発現上昇は認められず、培養上清中のDKK3の量も変化しなかった。DKK3タンパク発現には組織特異性があること、DKK3のmRNA発現とタンパク発現には調整機構が働いている可能性が示唆された。HNSCCにおけるDKK3発現は腫瘍の浸潤や転移においてoncogenicに作用する可能性を仮定し、検討を続けている。25基-89:FAKを分子標的とする消化管悪性腫瘍の腹膜播種転移に対する新規治療戦略の確立研究代表者:髙岡 宗徳(総合外科学)【緒言】腹膜播種転移は悪性度の高い浸潤転移形式であり、しばしば治療抵抗性で強い腹部症状を伴い、多くは急速に不幸な転帰に至る。腫瘍細胞が遊離遊走し、腹膜へ接着した後、腹膜上で浸潤・増殖する一連の過程において、細胞接着斑に局在し活性化する分子であるfocal adhesion kinase(FAK)は重要な役割を担うことが予想される。FAKを阻害することによる腹膜播種形成への影響について基礎的検討を行い、新規治療戦略の可能性について考察した。【方法】選択的FAK阻害剤(TAE226)を大腸癌細胞株(H116)に通常培養条件下で投与し、増殖・接着・遊走の各機能に及ぼす効果を検討した。また、ヌードマウスの腹腔内にH116細胞を接種して作成した腹膜播種モデルにTAE226を経口投与させ、腹膜播種形成能の変化を観察した。さらに、TAE226投与による腹膜播種モデルマウスの生存期間への影響についても検討した。【結果】通常培養下でTAE226はHCT116細胞の増殖および遊走能を抑制した(GI50 = 0.2185μM)。腹膜播種モデルにおいて、接種後48時間で腹膜に接着した細胞数はTAE226の経口投与によって約68%減少し、播種結節の増殖を強力に抑制した(control vs TAE226 = 100.0±20.80 vs 20.4±9.80, p=0.000678)。その結果、腹膜播種モデルマウスの生存期間を有意に延長させた(中央値; control群: 26.5 days, TAE226群: 36.5 days, p=0.00082)。【結語】FAK阻害は播種結節の強力な増殖抑制作用及び生存期間延長効果が得られることから、腹膜播種症例において病勢コントロールを期待できる治療戦略であることが示唆された。S55

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