医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-80:HSP90阻害剤を用いた難治性消化器癌に対する新規分子標的治療法の開発研究代表者:山辻 知樹(総合外科学)【目的】HSP90は細胞内分子シャペロンであり、正常細胞にも多く存在するが、癌細胞には恒常的に発現し、悪性腫瘍に対する新規治療ターゲットとして注目されている。合成開発された新規HSP90阻害剤AUY922はその阻害効果の高さと特異性から最も臨床応用に近いとされる。我々は食道癌培養細胞を用いてAUY922の細胞増殖抑制効果を示した(Bao et al, Oncol Rep.; 29: 45-50.2013)。本研究はAUY922を食道癌に限らず胃癌や膵臓癌など難治性消化器癌の治療に応用することを目指す。【方法と結果】ⅰ)AUY-922 による消化癌細胞増殖抑制効果の検討:ヒト食道癌細胞に加え、膵臓癌細胞PANC-1、MIAPACA-2、BxPC-3、胃癌細胞NUGC-3を用いた。AUY922は胃癌細胞NUGC-3、膵癌細胞PANC-1とMIAPACA-2に対する増殖抑制効果を示したが、Bxpc3に対する増殖抑制効果は弱かった。ii) AUY-922 による増殖抑制機序の解析:PTEN発現量の低い食道癌細胞TE-4においてAUY922によるリン酸化Aktの強い発現抑制がみられ、PTEN/Aktシグナルが関与している可能性が示唆された。【結論】新規HSP90阻害剤AUY922は従来の抗がん剤耐性を有する癌細胞へも増殖抑制効果を示し、新たな治療戦略の選択肢になり得ると考えられる。25基-79:癌細胞と癌関連線維芽細胞の相互作用を標的にした新しい子宮頸癌治療の研究研究代表者:村田 卓也(産婦人科学1) ヌードマウスの皮下に移植した子宮頸癌細胞の造腫瘍性の薬剤による阻害実験を計画している。本実験は、子宮頸癌の培養細胞ME180とともに、癌の組織から分離した癌関連線維芽細胞を共移植した腫瘍に対する影響を解析する。これまで我々が行った実験の結果から、癌関連線維芽細胞の存在により、癌細胞の増殖が促進されることが明らかとなった。そこには、癌細胞と線維芽細胞の間で、EGFR系とPDGFR系の2つのシグナル経路が相互に関与していることが明らかとなった。そのため、それぞれの経路の阻害剤であるImatinibとErlotinibを併用して投与することによりErlotinibもしくはImainibの単剤投与の時と比較してより強い腫瘍縮小効果が期待される。この増強効果がみられるかどうかを検討する実験を現在計画中である。5月中旬より開始し、7月上旬には結果が判明する予定である。S53

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