医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-99: 遺伝子改変発癌マウスを用いたIL-1βによる腫瘍局所の炎症と癌浸潤・進展の解析と漢方薬による炎症反応制御の検討研究代表者:中村 隆文(産婦人科学1)【目的】遺伝子改変水晶体腫瘍発生マウス(αT3マウス)を用いて、腫瘍局所の炎症と癌の浸潤進展について明らかにする。【方法】1)SV40T抗原を水晶体上皮に発現させて、上皮性未分化癌を眼球内に発生するαT3マウスを継代維持する。2)炎症性サイトカインであるIL-1βを水晶体上皮に過剰に発現するαIL-1βマウスと交配させてαT3/βマウスを作製する。3)αT3/βマウス観察して、腫瘍局所の炎症が腫瘍の浸潤・進展を促進しているかを病理組織的に検討する。【結果】1) αT3マウスは胎生期より水晶体上皮細胞に異形成を生じ始め、生後1~2ヶ月で上皮内癌になり、生後数ヶ月で周囲組織を破壊する浸潤癌となり脳組織に浸潤した。またさらに頚部のリンパ節や肺に転移した。比較的長期間(約1年)生存可能である。2) αT3腫瘍局所に炎症性サイトカインのIL-1βを産生させたαT3/βマウスは水晶体上皮性未分化癌の浸潤進展による眼球の破壊の進行が早く起きることを確認した。3) 正常な免疫系を有するαT3マウスは担癌状態で1年以上生存が可能であるが、αT3腫瘍局所に炎症性サイトカインのIL-1βを産生させたαT3/βマウスの寿命はαT3マウスより短縮することを確認した。4)αT3/βマウスの病理解剖で腫瘍局所にはマクロファージの浸潤が多く認められ、腫瘍の周辺組織を破壊浸潤していた。【結論】IL-1βにより誘導されたマクロファージによる腫瘍局所の炎症が、癌の浸潤・進展を増悪させて担癌マウスの寿命にまで影響することが明らかになった。25基-34:胸部悪性腫瘍における抗腫瘍薬の自然免疫逃避機構に及ぼす影響の解析研究代表者:沖田 理貴(呼吸器外科学)【背景】NK細胞傷害活性の主なメカニズムにNKG2Dリガンドを介した標的認識機構があり、NK細胞は免疫監視機構を担う。腫瘍細胞におけるNKG2Dリガンド発現機構としてはDNAストレスを介したATM-ATR経路、癌遺伝子 (BCL/ABL、HER3)が報告されてきたが、未解明な点も多い。【方法】5種の非小細胞肺癌細胞株において、各種抗腫瘍薬(ゲムシタビン、ペメトレキセート、ドセタキセル、ビノレルビン、ゲフィチニブ)曝露がNKG2Dリガンド発現にあたえる影響を、フローサイトメトリー法で検討した。更にゲムシタビン、ゲフィチニブ曝露がNK細胞傷害活性に与える影響をLDH放出試験で評価した。【結果】複数の細胞株において、ゲムシタビン、ドセタキセルはNKG2Dリガンドの発現を増強させる一方、ゲフィチニブはNKG2Dリガンド発現を低下させた。NK細胞傷害活性は、ゲムシタビンで増強し、ゲフィチニブでは減弱した。N細胞内シグナルの解析から、ゲムシタビンとゲフィチニブはそれぞれATM-ATRシグナル、EGFR-PI3K-AKTシグナルを介してKG2Dリガンド発現に影響を及ぼすことが示唆された。【結論】抗腫瘍薬はNKG2Dリガンド発現量を変化させ、NK細胞傷害活性に影響を及ぼす。しかし、殺細胞性抗腫瘍薬とEGFRシグナル阻害薬では、その反応は異なる。S49
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