医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-74: 脂肪食摂取による主膵管内膵液の流れの経時的変化に関する検討:Time SLIP(time-spatial labeling inversion pulse)併用非造影MRIによる評価研究代表者:伊東 克能(放射線医学(画像診断1))【目的】現在、経口摂取後に分泌される膵液の生理的変化を非侵襲的に評価する方法はない。Time-SLIPを併用した非造影MRIは、血流の評価や脳脊髄液の動態観察の評価法として発展し、任意の部位に限局した選択的IR パルスを印可することで特定の臓器内の流れや背景の信号を抑制することができる事が特徴である。我々はこの特性を生かした本法による機能イメージによって非侵襲的に膵液の流れを可視化することに成功している。本研究は、本法を用いて健常者における経口摂取前後の生理的な膵液の分泌(流れ)を経時的に評価することである。【方法】2D-MRCPを用いて乳頭部から幅20mmに選択的IRパルスを印加し、関心領域内の主膵管内膵液(高信号)を抑制し、流入してくる膵液(高信号)を描出する。これを連続撮像し動態イメージとして可視化する(撮像は15秒ごとに1回行い5分間(計20回))。この撮像を空腹時と食後7分毎に食後45分まで行う。関心領域内に流入する膵液の距離を平均流入グレードとして評価する。経口摂取はテルモ社製のテルミール2.0α(200ml)を用いる。【結果】平均流入グレードは、食前が1.6、食後5分と12分後は2.1、19分後は2.2、26分後は1.9、33分後は1.4、40分後は1.2を示した。平均流入グレードは、食後5分に食前より有意に上昇認め(P<0.011)、ピークは19分後の2.2であり、その後は有意に低下していった(P<0.031, P<0.047, P<0.02)。本法を用いる事で、非侵襲的に膵液の生理的な分泌を評価可能であると考えられる。25基-8: コルチゾール合成・代謝・作用機構についての研究-血中ステロイド分画同時測定による評価-研究代表者:宗 友厚(糖尿病・代謝・内分泌内科学) コルチゾール(F)は、活性型グルココルチコイド(GC)の代表として、糖質代謝のみならず脂質・蛋白質・核酸といった基本物質の代謝や循環調節をも司る。副腎皮質束状層での産生はフィードバック調節の代表である視床下部-下垂体-副腎(HPA)系により巧妙に調節されるほか、受容体前の局所代謝も重要で、腎での11βHSDタイプ2によるコーチゾンへの不活化、一方で肝・脂肪・血管系・HPA系等に広く存在する11βHSDタイプ1とH6PDによるFへの再生(賦活化)、等によりGC作用が調節される。Fの欠乏はショック・塩喪失など生命危機に直結する一方、過剰となればCushing徴候に集約される弊害を来すが、GC作用の軽微な異常が糖脂質代謝に与える影響も想定されているが、F作用を総体的に把握するためには産生~代謝の各ステップを反映する指標が必要である。 本研究は、従来法で問題とされた交叉反応や測定誤差を克服できるLC-MS/MS法を用いて、中間生成物である複数ステロイドの血中濃度を同時に定量し、各々の合成酵素活性やF~E間代謝状態の指標とし、他の臨床的指標との関連を検討すること、が目的である。今回は健常者に於いて検討した。ACTHとの正相関関係は、DHEA<F<11-deoxy-F<17-OH-プレグネノロンの順に強かった。また酵素活性をproduct/precursor比で判断すると、11β-hydroxylase<3βHSD<17,20-lyaseの順に強く、ACTHと負に相関していた。21-hydroxylase活性や11-oxoreductase活性は弱いながらもACTHと正相関しており、巧妙な調節系の存在が推察される。S47
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