医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-76:腹膜線維化における酸化ストレス依存的Wntシグナル伝達制御機構の解明研究代表者:佐々木 環(腎臓・高血圧内科学)【目的】腹膜中皮の線維化は,腹膜機能低下の規定因子であり,中皮細胞形質変換 (EMT) は,線維化初期過程において重要な役割を果たしている。EMT及び組織線維化にはWntシグナル活性化が関与することが示されている。主として腎遠位尿細管で産生される抗老化蛋白klothoはWnt活性抑制作用を有することから,「Klotho蛋白は腹膜線維化過程において,Wntシグナル系抑制によりEMTを抑制し,線維化抑制に働き,腹膜保護作用を発揮する」との仮説を立て検証した。【方法】Klotho過剰発現マウス(Klotho-Tg)及びWnt制御下にβ-galactosidase遺伝子を発現するレポーターマウス(Wnt-LacZ)を用いた。長期留置ポートを皮下に埋設し,連日高糖濃度の透析液を注入し,腹膜線維化を惹起するモデルを作成した。線維化過程でのWntシグナル系活性化とKlotho蛋白の腹膜線維化に対する効果を検討した。【結果】注入14日後に再生腹膜中皮にWnt活性化(LacZ染色)と中皮細胞EMT(α-SMA発現増加)を認めた。28日後,癒着を伴う腹膜線維化の進行及び腹膜組織におけるCTGF,fibronectin等の遺伝子発現増加を認めた。一方Klotho-Tg腹膜線維化モデルでは,腹膜組織におけるWnt活性化が抑制され,EMTの進行,線維化が改善された。【結論】腹膜線維化にはWntシグナル活性化が関与する。Klotho蛋白はWntシグナル活性化を抑制し,中皮細胞形質変換,線維化を抑制し腹膜保護作用を示す。25基-90: 慢性腎臓病を伴う高尿酸血症患者における新規キサンチンオキシダーゼ阻害薬フェブキソスタットによる尿酸低下効果と血管内皮・動脈硬化改善度の関連性の検討研究代表者:駒井 則夫(腎臓・高血圧内科学) 高尿酸血症(HUA)は慢性腎臓病(CKD)及び心血管病のリスクであるが、その治療薬が腎・心血管保護に寄与するかは不明である。フェブキソスタット(Fbx)は腎機能低下時も減量せず使用できる。目的:CKDを伴うHUA患者を対象として、Fbxによる尿酸低下効果と血管内皮・動脈硬化改善度との関連性を検討した。研究デザイン:前向き観察研究。実施期間:2012年10月~2015年3月(登録期間~2014年3月)。対象:本学附属病院腎臓内科外来通院中のCKD G3(eGFR 30~59ml/min/1.73m2)を伴うHUA患者で、アロプリノール(Alp)100mg/日以下使用にて血清尿酸値(sUA)7.0mg/dl以下を達成できていない患者(痛風関節炎の既往もしくは高血圧を有する患者においては6.0以下を達成できていない患者)。方法:AlpからFbxに切り替え、sUA目標値を達成するまで漸増(最大40mg/日)。主要評価項目:切替前、48週後でのsUA変化量、動脈硬化指標(心臓足首血管指標CAVI、頸部内膜中膜肥厚cIMT-max)変化量。結果:計16例より同意を得た。2014年3月時点、7例で研究終了。1例は切替時eGFR>60のため、解析より除外された。年齢66(35-83)歳。全て男性。BMI 23.1(21.8-24.7)。原疾患は慢性糸球体腎炎1例、腎硬化症2例、他3例。高血圧5例、糖尿病なし、全例で脂質異常症あり。痛風の既往2例。心血管病の既往1例。投与薬はAlp 50mg 3例、同100mg 3例、ARB 5例、スタチン3例。切替前、血圧129±15/75±10mmHg、eGFR 47.7±10.1、sUA 7.8±0.8、CAVI 8.1±1.1、cIMT-max 0.9±0.4mmであった。48週後、各々、134±11/79±9、47.2±10.3、5.6±1.3(p<0.05)、8.6±1.2、1.0±0.4であった。Fbx投与量は20mg 4例、30mg 1例、40mg 1例で、5例でsUA<6.0を達成した。結語:今回6例では、Fbxにより、CKD患者でのHUAは著明に改善するも、動脈硬化の進展は抑制されていない。全症例での解析結果が望まれる。S44川 崎 医 学 会 誌

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