医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-100:移植された代用血管の組織治癒過程に関する病理組織学的検討研究代表者:田淵 篤(心臓血管外科学)【目的】臨床例で得られた各種代用血管の摘出標本について組織治癒、器質化の状況を病理組織学的に明らかにする。【材料、方法】既存の摘出標本45症例、50標本について肉眼的観察、H-E染色、Azan染色、Elastica Van Gieson染色を行い、代用血管の組織治癒、器質化あるいは吻合部狭窄の状況を検討した。新規の標本は、平成25年度は再手術例がなく、得られなかった。【結果】ダクロン製人工血管では人工血管の基材を通じての器質化がみられたが、新生内膜は全例血栓あるいは線維組織からなり、移植後28年経過した例でも内皮細胞は確認されなかった。ePTFE人工血管は器質化が見られず、新生内膜は厚い血栓のみであった。透析用シャント例では、人工血管外周に線維性被膜を形成し、穿刺部から人工血管内腔にコラーゲン線維、線維芽細胞の浸潤がみられた。透析用ポリウレタン製人工血管は、外周の線維性被膜は乏しく、穿刺部から内腔への線維組織の浸潤は観察されなかった。【まとめ】1.ダクロン性人工血管は器質化を認めたが、新生内膜は血栓あるいは線維組織のみであった。2.ePTFE人工血管は器質化がみられず、シャント例は穿刺部から線維組織、線維芽細胞の浸潤がみられた。3.ポリウレタン性人工血管は全層で線維組織、線維芽細胞の浸潤を観察できなかった。25基-42:VerifyNowを用いた血小板機能からみた術前抗血小板剤中止のタイミング 研究代表者:種本 和雄(心臓血管外科学) 現在、各種抗血小板剤投与を受けている患者が増加しているが、エビデンスに基づいた術前休薬期間は示されていない。従来の比濁法による検査は操作が煩雑で検査時間も長く、臨床応用には至っていないのが現状である。しかし近年、迅速で簡便かつ正確な血小板機能測定装置VerifyNowシステムが登場し、内服中のモニタリングが可能となった。本研究は同システムを用いて術前薬剤中止後の血小板機能回復経過から至適術前中止時期を明らかにすることおよび術直前の血小板機能と術後出血量の関係を検討することを目的に行うものである。 平成25年度は、クロピドグレルを内服中の予定手術患者7例を新たに加え、VerifyNowを用いて最終内服日から手術当日までのPRU値および抑制率を経時的に測定し、血小板機能回復経過から至適中止時期を検討した。結果、休薬後2-5日でPRU値がcut off値を上回り、血小板凝集能が回復していることが示された。 また、VerifyNowを用いた術前の血小板機能と術後出血量との関連を調べる研究において、今年度は新たに大動脈弁置換術17例、僧帽弁形成術19例、心拍動下冠動脈バイパス術9例を追加して検討を行った。結果としていずれの術式においても軽度の逆相関は認めるものの、有意差までは認めなかった。以上の結果から、本邦における抗血小板薬の術前休薬期間は短縮可能であると思われる。また、VerifyNowシステムによる術前血小板機能評価により術後出血量を予測できる可能性があると考えられる。S41

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