医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-58:心室ペーシングにおける心機能と運動耐容能評価に関する研究研究代表者:林田 晃寛(循環器内科学) 房室ブロックの患者の予後は、ペースメーカ植え込みによって改善したが、非生理的ペーシング(心室ペーシング)によって心機能が低下し、慢性心不全状態となり、QOLが低下する症例が存在する。 心室ペーシングでは、右室心尖部からの刺激であるため、刺激伝導系を通らず、心室内心筋を刺激が伝播する。そのため、左心室の伝播は中隔側が先に興奮して、側壁側が遅れて興奮するという完全左脚ブロックと同様のパターンをとる。そのようなパターンをとることによって、中隔が収縮する際には側壁には興奮が伝播しておらず、側壁が収縮する際には中隔が興奮を終了してしまっているという収縮の「ずれ」が生じ、左室のエネルギー効率が悪化し、その結果心機能異常が出現する。しかし、心室ペーシングを受けたすべての例で心機能異常が出現する訳ではない。 そこで我々は、過去にペースメーカを植え込まれた患者を対象として、心機能異常の予測因子検出を試みた。心エコーと心電図所見を解析すると、植え込み時の心電図パターンが心機能低下の予測因子であった。また、右室と左室の心尖部の位置が左室機能に影響を与えると考えられた。25基-102:3次元軽食堂心エコー図による僧帽弁複合体の動的変化の定量化研究代表者:鍵山 暢之(循環器内科学)背景:機能性僧帽弁逆流は拡大した左室と乳頭筋の位置異常が原因となる。機能性僧帽弁逆流に対する最良の手術手技を模索するために、弁下構造の詳細な動きを理解することが重要である。乳頭筋の先端は僧帽弁前尖へ腱索をおくる前尖ヘッドと後尖へ腱索を送る後尖ヘッドに分かれている。目的:3次元経食道心エコー図にて、機能性僧帽弁逆流における乳頭筋ヘッドの動きを明らかとする。方法:機能性僧帽弁逆流を有する7例と9例の対照群へ経食道心エコー図を行った。3次元データセットから各々の乳頭筋ヘッドを同定して得た座標から、乳頭筋ヘッド間の距離を算出した。心周期全体にわたり同作業を行い、更にそれを収縮期と拡張期にわけてスプライン補間してグラフ化し、その変化を検討した。結果:機能性僧帽弁逆流では対照例に比して、収縮期末期における前乳頭筋と後乳頭筋それぞれの前尖ヘッド間の距離(p=0.005)および後乳頭筋の前尖ヘッドと後尖ヘッド間(p=0.001)の距離は有意に拡大していた。また機能性僧帽弁逆流ではいずれの乳頭筋ヘッド間の距離の変化も小さかった。結論:3次元経食道心エコー図により乳頭筋ヘッドの動きを心周期全体にわたり観察しえた。機能性僧帽弁逆流において乳頭筋ヘッド間の距離が拡大していることが示され、このことは今後機能性僧帽弁逆流の手術をする際に重要な知見と考えた。S37

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