医学会誌 第40巻 補遺号
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25ス-6:網膜色素変性症におけるプロサポシンの機能解析研究代表者:小野 公嗣(解剖学)【目的】プロサポシン(PSAP)はライソゾーム内でのスフィンゴ糖脂質の分解に必要なサポシン(SAP)の前駆体蛋白質であるともに、細胞内外において独自の生理活性を持つとされている。最近、網膜色素変性症の原因遺伝子のひとつであるセマフォリン4Aが網膜色素上皮細胞においてPSAPと相互作用することが示された。本研究では、網膜色素変性症の病態解明を目指し、網膜におけるPSAPの機能を解明することを目的とした。【結果】本年度は、PSAP 欠損マウス(PSAP-KO)およびPSAP過剰発現マウス(PSAP-Tg)の網膜を病理組織学的に解析した。PSAP-Tgでは出生時には正常であった視細胞が 日齢21頃から脱落し始め、日齢35までにはほぼ完全に脱落した。電子顕微鏡解析では、PSAP-Tgの網膜において、日齢30に、視細胞の核の凝集、視細胞外節における膜状封入体の存在が観察され、網膜色素上皮細胞ではライソゾーム様の細胞内小器官が増加していた。日齢44では、視細胞が完全に消失し、膜様封入体を含むマクロファージ様細胞の浸潤が多数認められた。光刺激による視細胞死の可能性を考え、暗条件下でPSAP-Tgを飼育したところ、暗条件下でも同等に視細胞は脱落した。一方、PSAP-KOでは病末期の日齢28まで視細胞の変性脱落は認められなかった。【考察】以上の結果から、細胞内のPSAP発現量の上昇が視細胞死を惹起することが判った。PSAP-Tgは網膜色素変性症の病態を解明する上で有用なモデルマウスといえる。現在、網膜においてPSAPと相互作用する分子の探索を進めている。25基-18:移植用細胞の供給源としての嗅粘膜の可能性を探る研究代表者:宮本 修(生理学2) パーキンソン病やてんかんなどの神経疾患に対する移植治療の細胞供給源として、外来性の幹細胞(ES細胞や iPS細胞)以外に内因性の幹細胞の利用がある。内因性の幹細胞の場合は倫理的な問題や腫瘍化の危険性も少ないと考えられる。本研究では、内因性幹細胞の中で採取が容易で、神経栄養因子などを分泌する嗅神経鞘細胞(OEC)が共存している嗅粘膜について、移植細胞の供給源としての可能性を以下の項目について検討した。1)嗅粘膜の上皮層と固有層に存在する幹細胞特性の比較 上皮層からの細胞を培養し、NCAMやネスチン陽性を確認後、ニューロン用培地に置換してさらに培養を続けることでTuj-1陽性細胞を得ることが出来た。一方、固有層は神経幹細胞よりもOECの採取に適することが分かった。2)ドーパミンやGABA系ニューロンへの分化方法の開発 嗅粘膜上皮層から得た神経幹細胞にBDNFおよびGDNFを作用させることで、ドーパミン系ニューロンのマーカーであるTH/Tuj-1陽性細胞への分化が確認された。一方、GABA系への分化を誘導するBDNFを加え培養したが、GABA系ニューロンは得られなかった。3)OECの増殖法確立とニューロンとの共移植の可能性 固有層から採取したOECを培養してコンフルエントの70%まで増やすことができた。今後、ニューロンとOECの共培養実験を行い、疾患モデル動物への移植について検討する予定である。S29

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