医学会誌 第40巻 補遺号
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○抄録の並び順は、原則としてポスター展示の並び順となっております。25基-86:アポトーシスの分子機構の解析研究代表者:刀祢 重信(生化学) アポトーシスの分子機構を、実行過程と最初期の2局面で解析してきた。実行過程の中で最も未解明な核凝縮について、これまでにcell-free アポトーシス法(単離核を用いたアポトーシス誘導法)と微速度映画を用いて、核凝縮がリング形成からネックレスを経て最終の核崩壊に至る3ステップを忠実にたどることを発見し、そのうち数分で生じるリング構造がどのようなメカニズムで生じるのかを集中的に調べてきた。(すでにネックレスと核崩壊は、それぞれDNase, caspase-6が誘導することを明らかにしている)。電子顕微鏡観察でもリング内部には、ほとんど構造は見られない。 今年度は、そのリングの中はどうなっているのかを知るために2種類の核ボディー(機能不明の核内構造体)PMLボディーと核スペックルの局在性を調べた。驚いたことにリング形成時にクロマチンは核膜直下に移動しても、核ボディーはリング内部の空洞に残ることが判明した。 またレーザープラズマ軟X線顕微鏡によってリング内部を観察し、リング内に繊維状の構造を確認した。ATP要求性であること、アクチン重合阻害剤で最終の核崩壊が阻害されることと考えあわせ、核内アクチンの関与が考えられる。 更にリング形成に関わる、ヒストンH2Bのリン酸化を担う酵素を特定する試みを続けている。H2Bをリン酸化して核凝縮を起こすとされるキナーゼMst1の組換え蛋白を単離核に加えたが、全く凝縮しなかった。現在、その酵素の遺伝子をKOする試みを始めている。25基-37: 単一個体が時系列クローンである条虫(サナダムシ)のモデル動物化-孵化率の高い3倍体株の選別-研究代表者:沖野 哲也(微生物学) 条虫類は雌雄同体で、同一個体に頭節~老熟節と年齢の異なる片節が、あたかも映画フィルムのように時間軸に沿って時系列で並んでいる。つまり、虫体の後方にいくにつれ少しずつ加齢が進んでいるので、多細胞動物の分化・加齢・エネルギー代謝のモデル動物としてユニークな材料である。本研究は、マンソン裂頭条虫(Spirometra erinaceieuropaei)のライフサイクルを実験室内で完成させ、1匹の成虫を起源とする3倍体クローンの幼虫を多量に維持し、遺伝的に均一な条虫株を樹立することを目的としている。感染幼虫による宿主への影響を調べるため、3倍体と考えられる幼虫およびシマヘビ由来(野生株:3倍体か2倍体かは不明)の幼虫を、実験的第2中間宿主であるマウス(ICR♀6W)各4匹に5錠ずつ経口投与した。その後、無感染マウス(コントロール)4匹も含め計12匹のマウスの体重を1週間ごと測定した。その結果、感染マウスと無感染マウスとの間に有意差が認められた。つまり、感染マウスが感染幼虫によって体重増加を引き起こしていることが確認できた。今後、それぞれのマウスの脾臓を摘出し、制御性T細胞の出現頻度も検討する予定である。また、株の選別に関して、幼虫の段階で、体細胞分裂中期の染色体像が観察しにくいため、2倍体と3倍体とのDNA量の差に着目し、両者をフローサイトメーターにより区別できないかを試みている。― 生物学/発生学/神経・筋 ―S22川 崎 医 学 会 誌

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