川崎医学会誌39-2
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24ス-4:FOXO1シグナリングに対するアスベスト曝露の影響研究代表者:松崎 秀紀(衛生学) アスベストは肺がんや悪性中皮腫を誘導することが広く知られている。我々はアスベスト曝露が肺上皮細胞や中皮細胞に作用しがん化を誘導するのみならず制御性T細胞機能を増強することで腫瘍免疫を減弱しすることを提唱している。これまでに制御性T細胞のモデル細胞であるMT-2細胞を用いて低濃度アスベストの長期曝露細胞を作成し、アスベスト長期曝露細胞では高濃度のアスベスト短期曝露により誘導されるアポトーシス細胞数が低下すること、抑制性サイトカイン産生量が増加することを明らかにした。さらに、低濃度アスベスト長期曝露細胞の網羅的な遺伝子発現解析を実施し、アスベスト長期曝露細胞ではフォークヘッドファミリー転写因子のFoxO1の発現が低下していることを見いだしている。FoxO1はアポトーシスや細胞増殖、制御性T細胞の分化を調節することが報告されていることから、アスベスト長期曝露によるMT-2細胞の機能変化とFoxO1の役割を明らかにすることを目的としてshRNAを用いたFoxO1低発現細胞株を作製したところ、FoxO1低発現細胞は高濃度のアスベスト曝露により誘導されるアポトーシス細胞数が減少することから、FoxO1がアスベストによるアポトーシスの調節に関与することが示された。24ス-6: 珪酸曝露による自己免疫疾患発症に関わる免疫動態の解析-珪肺症例における免疫動態との比較検討研究代表者:李 順姫(衛生学) 珪酸(SiO2)の粉塵を慢性的に吸入することでおきる珪肺症では、多発性硬化症、リウマチ、強皮症といった自己免疫疾患が高頻度で併発する。その発症機序を明らかにする目的で、健常者由来末梢血単核球(PBMC)に珪酸曝露し、T細胞サブセットのマスター遺伝子、活性機能評価遺伝子、そしてサイトカイン遺伝子などの発現への影響を解析した結果、IL-1βに代表される一部のサイトカインや細胞周期制御遺伝子CyclinD1遺伝子の発現変化が珪酸曝露群で見られ、昨年度本学会にて報告した。IL-1β遺伝子発現がヒトマクロファージで増加したこと、そして珪肺症例では長期曝露が想定されることから、本研究では、ヒト単球由来THP-1細胞におよそ10ヶ月珪酸曝露(25μg/ml)を施すことで慢性曝露のモデル培養系を構築し、それら細胞の遺伝子発現を解析した。1x105細胞/mlに播種し、珪酸25μg/ml、PMA (2ng/ml)添加培地で2日間マクロファージへ分化誘導したのち、LPSを0、10、25、50、100ng/mlで刺激した後、各種遺伝子発現(CCL2、CCL3、CD80、CD86、IL-1β、IL-6、IL-18、IL-23、HLADR、TNFα、TGFβなど)をリアルタイムPCRで解析した。その結果、長期曝露細胞株と非曝露THP-1細胞間で著しい遺伝子発現の変化は見いだされなかった。また、珪酸曝露されたPBMCにおいてCyclinD1の発現が低下している傾向があることから、珪酸曝露による細胞周期への影響、そして珪肺症例由来血液における各種免疫関連因子の動態を検討し、今後は珪肺症と自己免疫疾患との関連を解析する。S74川 崎 医 学 会 誌

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