川崎医学会誌39-2
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24ス-3:高血圧における膵島微小血管障害の病態機序の解明と治療法開発研究代表者:桑原 篤憲(腎臓・高血圧内科学)[背景] 高血圧患者に糖尿病の合併が多く、細小血管障害の一環として膵ランゲルハンス(ラ氏)島組織障害の関与が想定されている。一方、大規模臨床試験においてアンギオテンシンⅡ受容体拮抗剤(ARB)が、高血圧患者の糖尿病新規発症を抑制することが示されている。しかしながら高血圧によるラ氏島微小血管障害のメカニズムとARBの膵保護・β細胞保護効果の詳細は不明である。高血圧モデルラットにおける膵ラ氏島微小血管障害の発症機序、およびARBの膵内微小血管障害の進展阻止による膵ラ氏島保護効果の解明を目的に実験を行った。[方法] (1) Stroke-Prone Spontaneously Hypertensive Rat(SHR-SP)を用いた。無治療群(SHR-SP)、ARB投与群を作成し、検討を行った。AZAN染色により組織学的解析を、レクチン染色でラ氏島内血管内皮障害を評価し、ED-1免疫染色で炎症細胞浸潤を評価した。(2) Dahl-Salt Sensitive Ratを用いた。8%高塩食群(Dahl-HS)、ARB投与群を作成し、(1)同様の検討を行った。[結果] (1) SHR-SP群では膵内細小動脈障害(血管平滑筋増殖、内腔狭小化)、ラ氏島内微小血管における内皮細胞障害を認めた。またラ氏島内へのED-1陽性細胞浸潤を認めた。一連の変化はARB群において有意に改善された。(2) Dahl-HS群では膵島肥大傾向、膵内細小動脈障害(血管平滑筋増殖、内腔狭小化)、ラ氏島内微小血管における内皮細胞障害を認めた。これらはARB群では改善していた。[結語] ARBは高血圧に伴う膵ラ氏島内微小血管障害を抑制しえた。ARBは高血圧患者の新規糖尿病合併の予防効果を有するのみならず、進行性のβ細胞脱落を阻止し糖尿病の難治化抑制に資すると考えられる。24ス-2: 腎間質線維化における内皮機能障害の役割の解明と腎障害進行阻止のための新規治療法の開発研究代表者:長洲 一(腎臓・高血圧内科学)【背景・目的】内皮機能障害は腎障害の進行促進因子である。特に内皮機能として内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)の役割は重要であり、eNOS蛋白発現低下やeNOSのuncouplingなどの機能異常により一酸化窒素(NO)産生低下が惹起される。一方で進行性腎障害の共通機序として間質線維化が重要な役割を担っているが、内皮機能障害と間質線維化の関連は明確にされていない。近年、Wnt-βcatenin経路活性化が間質線維化のメカニズムとして報告されている。我々は「NOシグナル伝達経路は、Wnt-βcateninを抑制的に制御しており、本経路の破綻が腎線維化を促進する」と仮説を立て、検証した。【方法】①野生型マウス(WT)、eNOS deficiency mice (eNOSKO) に対し一側尿管結紮(UUO)モデルを作成し、線維化におけるNOの役割を検討した。②NOシグナル伝達経路の内、soluble guanylate cyclase (sGC)- Protein kinase G (PKG) 経路活性化の腎線維化抑制効果を検討するため、sGC刺激薬を用いて検討した。【結果】WT-UUOに比較しeNOS-UUOでは線維化が増悪した。CTGF、TGF等のpro-fibrotic geneもWT-shamに比較しWT-UUOで増加していたが、eNOS-UUOでは更に著明に増加していた。WTではUUOによりβcateninの蓄積を認め、eNOS-UUOでさらに有意にβcateninの増加を認めた。これらの変化はBay41-2272投与により改善していた。【結語】eNOS-NO経路の破綻は腎線維化を促進させる。また、sGC刺激薬はβcateninのde-gradation促進を介し、Wnt-βcatenin経路を抑制による腎線維化抑制効果が期待される。S73

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