川崎医学会誌39-2
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24挑-4:癌患者に対する化学療法の心機能・心血管予後へおよぼす影響に関する前向き研究研究代表者:西村 哲(総合内科学3) 心血管イベントが生じることが知られているtrastuzumabやanthracycline系抗癌剤以外にも、心血管イベントを起こしえる抗癌剤あるいはその組み合わせが存在するのかを検索することが目的である。2010年1月から2013年4月までに川崎医科大学附属川崎病院にて、癌に対する化学療法施行前に心エコー検査を施行された34症例の内、低心機能症例1例を除いた33症例を登録した。左室駆出分画は61.9±4.2%、平均追跡期間は317.8±186.2日であった33例中、高血圧は15例、脂質異常症は8例、糖尿病は3例、喫煙者は21例であった。癌の内訳は、肺癌が26例、非肺癌が7例であった。また、フォローアップの心エコーを行えた症例は11例で、フォローアップの時点での左室駆出分画は62.8±5.2%であった。追跡期間中、有意な心イベントは発生せず、また、登録開始時とフォローアップ時の左室駆出分画の変化について検討したが、有意な変化は認めなかった(p=0.93)。さらに、追跡期間中に9例が癌あるいは癌に関連する肺炎などで死亡した。 イベントの発生について、登録症例数が少ないことと、追跡期間中に癌関連死を迎え、追跡期間が不十分であることなどから、登録症例数を更に増やし、追跡期間を延長していく予定である。24挑-3:5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた食道発癌抑制の可能性研究代表者:髙岡 宗徳(総合外科学) 食道癌の発癌には喫煙とアルコールの関与が特に指摘されており、各々の発がんリスクは非嗜好者の約3倍と言われ、発癌抑制を目指した対策も喫緊の懸案事項である。5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid;以下5-ALA)は生体内でヘムやシトクロムに代謝されて電子伝達系に利用されるが、大量投与することでポルフィリンの前駆体であるプロトポルフィリンIX(以下PPIX)を一時的に蓄積させ、その光増感性を利用して腫瘍の局在診断(光線力学診断)や治療(光線力学療法)への応用が進められている。5-ALAはその抗腫瘍効果のみならず、動植物の体内での抗加齢活性を有することも知られており、加齢に伴う遺伝子変異受容性がもたらしうる易発がん性を予防する観点から、今回5-ALAの化学発癌抑制効果を発案するに至った。 なお、本研究は動物実験を遂行するにあたり、発癌作用を有する4-Nitroquinoline-1-oxide(4NQO) ないしはN-nitrosomethylbutylamine(NMBuA)を動物に投与した際の糞尿排泄物処理についての未解決事項にて動物実験が開始できておらず、研究成果のまとめには至っていない。 同所性あるいは異所性に可移植性食道癌細胞をヌードマウスに接種してxenograftを作成し、5-ALAを担癌マウスに投与してその腫瘍増殖への影響を観察した。また、動物実験に先立ち、培養食道癌細胞の増殖への影響について検討したところ、通常培養条件下に5-ALAを加えただけでは食道癌細胞の増殖への影響は認めず、光照射による5-ALAのプロトポルフィリンへの過剰蓄積を促すことが必要ではないかと推察された。S71

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