川崎医学会誌39-2
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24挑-2:iPS細胞を用いた腸管再生の基礎研究研究代表者:吉田 篤史(小児外科学)【背景/目的】腸管は三杯葉に由来するため構造が複雑であることから極めて遅れた分野であり、これまで臨床的に利用可能な人工腸管は誰も成功していない。我々はマウスiPS細胞を用いてin vitroで腸管様構造物の作成を行っている。その初期段階である胚様体の作成方法はhanging dropあるいはマルチウェルプレートが一般的だが分化効率が悪い。現時点での成果としてMicro Sphere Arrayを導入し、容易に胚様体を多量に作成できたので報告する。【方法】マウスiPS細胞の懸濁液(5x105cells/ml)をアレイ内に250μl注入し6日間培養し、これで出来た計247個の胚様体を12ウェルプレート2枚に1ウェル約10個ずつ固着してさらに4週間培養した。ウェル1つにそれぞれ1つずつ作成された胚様体を、ゼラチンコートした12ウェルプレート上で各8個ずつ固着し、さらに2-4週間培養した。【結果】胚様体から分化した細胞はさまざまな細胞集団に分化誘導し、同一ウェル内に心筋様細胞、蠕動する平滑筋シート、腸管粘膜上皮に覆われた嚢胞、腸管様構造物などがみられた。【まとめ】iPS細胞はすべての細胞に分化誘導できる分化万能性があり、人工腸管作成のブレークスルーとなる可能性がある。自己細胞から脱分化させたiPS細胞を使用した腸管は拒絶を回避できることなど、将来的には臨床応用が可能となることが期待できる。24挑-6:C型肝炎におけるマイトファジーとアポトーシスのクロストーク研究代表者:原 裕一(肝胆膵内科学)【目的】我々はC型肝炎ウイルス(HCV)による酸化ストレスの亢進、ミトコンドリア障害と肝発癌の関連を報告してきた。一方障害を受けたミトコンドリアは選択的autophagy(マイトファジー)によって排除されるが、マイトファジーが誘導される際にユビキチン結合酵素であるParkinが脱分極したミトコンドリアに局在することが知られている。我々はParkinがHCV core蛋白と結合し、マイトファジーを抑制することを明らかにした。今回HCVがマイトファジーを抑制し、ミトコンドリア障害が持続するにもかかわらず。アポトーシスが抑制され肝発癌を促進させるのではないかという仮説のもと検討を行った。【方法】HCVの全遺伝子を組み込んだHCV RNA増殖細胞(OR-6)、HCVコア蛋白の発現調節が可能な細胞(Huh-7/191-20)を用いてミトコンドリア脱共役剤(CCCP)を加えアポトーシスの解析を行った。【結果】CCCP により細胞死が誘導されたが、この細胞死はDAPI染色により核の断片化が認められたことからアポトーシスであることが示唆された。CCCP誘導性のアポトーシスはHCVにより抑制された。【結論】HCVによりミトコンドリア障害の持続、酸化ストレスを惹起する一方で、アポトーシスが抑制されていることは肝発癌における重要な知見と考えられた。― 挑戦的萌芽研究 ―S69

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