川崎医学会誌39-2
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24基-12:酸化ストレスによる子宮筋収縮制御に関する検討研究代表者:下屋 浩一郎(産婦人科学) 子宮収縮は妊娠維持機構と陣痛発来(子宮収縮)機構の2つのバランスで制御されている。妊娠の成立過程から分娩に至るまで胎児成分である絨毛組織と母体組織である脱落膜・子宮筋層との連関が妊娠の維持にとって重要である。免疫担当細胞の活性化やそれに伴う過剰な酸化ストレスやその消去系・防御系の破綻が子宮収縮制御機構に及ぼす影響と病態に関して解析を行うことを目的とした。なお、研究にあたって倫理委員会の承認を得て研究を遂行した(課題番号482-2,1193)。抗酸化力(BAP)および酸化ストレス(d-ROM)について測定すると子宮内感染があり、子宮収縮も認められた(A)母体血中d-ROMは789.5 U.CARR、子宮内感染がなく、子宮収縮が認められた(B)母体血中d-ROMは667 U.CARR、子宮内感染がなく、子宮収縮も認めらない(C)母体血中d-ROMは610 U.CARRであり、非妊娠時の標準値200~300 U.CARRに比べて高値であり、子宮収縮および子宮内感染と相関した。一方、臍帯血中のd-ROMはそれぞれ97.5、123、83U.CARRであり、子宮内感染・子宮収縮との関連は認められず、成人に比べて低値であった。一方、(A)母体血中BAPは1540μmol/l、(B)母体血中BAPは1593μmol/l、(C)母体血中BAPは1215μmol/lであり、子宮内感染・子宮収縮との関連は認められず、抗酸化力は低いレベルにあった。一方、臍帯血中のBAPはそれぞれ2587、2603、2363μmol/lであり酸化力は高いレベルにあった。子宮内感染・子宮収縮と酸化ストレスに関連を呈しており、現在、子宮筋に対する酸化ストレスの直接的影響について解析を進めている。24基-4:中心性漿液性脈絡網膜症に対する光線力学的療法の有効性についての検討研究代表者:水川 憲一(眼科学)【目的】慢性化した中心性漿液性脈絡網膜症(cCSC)に対する光線力学的療法(PDT)の有用性が報告されているが、PDT後の脈絡膜循環障害や脈絡膜新生血管の発生が指摘されている。そこで脈絡膜への影響が少ないとされる低照射エネルギーPDT(RFPDT)を施行し、3ヵ月の短期治療成績について検討した。【対象と方法】対象はcCSC 10例10眼。治療前、治療後3ヵ月におけるlogMAR視力と光干渉断層計による形態学的変化について検討を行った。また5例では治療後3ヵ月の時点で造影検査を行い脈絡膜循環障害の有無についても評価を行った。【結果】平均logMAR視力は治療前 0.29、治療後3ヵ月 0.15と有意な視力改善が認められた(Wilcoxon signed-rank test:P=0.042)。logMAR視力0.3以上の変化で改善、悪化とした場合、改善2例、不変8例、悪化した症例は見られなかった。治療前には全例で中心窩を含む漿液性網膜剥離(SRD)が認められたが、治療後3ヵ月では10例中9例でSRDが消失していた。残りの1例は治療後1ヵ月の時点ではSRDが消失していたが、3ヵ月では再発していた。造影を行った5例全例で脈絡膜循環障害は見られなかった。 【結論】cCSCに対するRFPDTは、1例(10%)で再発が見られたものの、短期的には脈絡膜循環障害は見られず、視力改善に有用であることが分かった。― その他の臨床 ―S63
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