川崎医学会誌39-2
58/86
24基-83:新規消毒薬二酸化塩素の抗黄色ブドウ球菌作用に関する検討研究代表者:山田 作夫(微生物学) 新規消毒薬である二酸化塩素はウイルスや芽胞にも効果が期待されている。しかしながら、その作用メカニズムの詳細については未だ不明である。本研究では、まず黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果を、処理後の残存生菌数を経時的に測定して検討したところ、常用量の1/4(0.0025%)以上の濃度で抗黄色ブドウ球菌効果の得られることが判明した。そこで、二酸化塩素の作用部位を明らかにするために、0.0025%および0.005%処理菌を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、両濃度処理菌において、5分処理菌においては菌体表面の一部が隆起した像が観察でき、15分処理菌ではその部分から溶菌している像が観察できた。次に、処理菌を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、細胞壁の膨隆が両濃度の5分および15分処理菌において観察でき、さらにその細胞壁の膨隆部位は次の隔壁形成部位ではなく、次々期隔壁形成部位であることが明らかとなった。一方、対照薬として用いた次亜塩素酸Naが黄色ブドウ球菌染色体DNAを分解することがアガロースゲル電気泳動法にて明らかとなったことから、同法により二酸化塩素の染色体DNAへの影響を検索したが、二酸化塩素では顕著な作用は認められなかった。 以上の結果から、二酸化塩素は次々期隔壁形成部位に異常をきたし、抗黄色ブドウ球菌効果を惹起することが示唆された。24基-22:マイコプラズマ薬剤耐性疫学と抗菌薬の有効性の検討研究代表者:河合 泰宏(小児科学)はじめに本邦では2000年頃から小児科領域においてマクロライド(MLs)耐性マイコプラズマ(Mp)感染症が報告されるようになったが、調査年度、地域によって耐性率は15~90%と様々である。過去の報告は大学病院や地域基幹病院からが主で、報告された耐性率が真に本邦の耐性率を反映しているか不明である。目的プライマリケアも含んだ大規模な疫学データを得る。また、各種抗菌薬(MLs、MINO、TFLX)の効果を臨床的、微生物学的に検討する。対象と方法対象は、2005年から2012年に当院または登録医療施設を受診した臨床的にMp感染症が疑われる小児患者。PCRと遺伝子変異の検索を行いMLs耐性率の調査と共に抗菌薬投与前後の鼻咽頭菌量の変化を検討する。結果2008年から2012年までの耐性率は08年で56%から12年83%と上昇していた。また、MLs耐性と診断された150例について、MLs、TFLX、MINOの臨床効果と鼻咽頭菌量の変化を比較した。AZM、CAM、TFLX、MINOについて抗菌薬投与後の平均有熱期間はそれぞれ、3.06、3.15、2.31、1.83日であった。MLs群と比べてTFLX、MINO群の平均有熱期間は短かった。鼻咽頭における投与後の菌量の減少はMINOが速やかで、次いでTFLX、MLsであり、臨床症状と一致していた。S54川 崎 医 学 会 誌
元のページ