川崎医学会誌39-2
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24基-14:マウス肝臓造血終息期における巨核球の運命-免疫組織化学ならびに超微形態学的観察研究代表者:園田 祐治(解剖学) マウス肝臓造血の終焉と共に巨核球は肝臓から消失する。本研究はマウス肝臓造血の消退に伴う巨核球の運命を免疫組織化学による計量的解析ならびに超微形態学的観察によって検討した。巨核球ならびにその前駆細胞は、CD41抗体に陽性を示す。CD41陽性細胞数は、胎生12日で22.9±6.6/mm3、以後急速に増加し、胎生14日(38.4±10.0/mm3)でピークとなり、以後緩やかに減少し、生後0日で21.7±10.0/mm3、生後6日で3.6±2.0/mm3となり、生後20日以後肝臓に巨核球は観察されない。肝臓造血開始期から造血最盛期で、巨核球は赤血球系造血細胞と共に類洞周囲腔に存在し、その核はユークロマチンに富み、良く発達した複数の核小体を有し、多様な分葉形態を示しつつ細胞の中央に位置する。生後6日以後で、巨核球は発達した分離膜ときわめて複雑な分葉核を持ち、核の一部は細胞質内に分離し、多核状を示すようになる。一方、生後早期の巨核球にアポトーシス様の形態やTUNNEL陽性反応は認められない。また、新生子期において、肝臓内の巨核球は、その多くが類洞腔に存在し、類洞周囲腔から類洞腔へ移動する像も観察される。肝臓造血終息期に認められた巨核球の形態変化は、巨核球の細胞死に関連する形態的な変化だと考えられる。また、巨核球の一部は、血流にのって肝臓から消失することが示唆された。24基-17:遺伝性球状赤血球症の病因解明と簡易診断法の確立に向けて研究代表者:杉原 尚(血液内科学)【緒言】遺伝性球状赤血球症(HS)は赤血球膜蛋白異常(spectrin、ankyrin、band 3、P4.2)に起因する疾患であるが、従来の赤血球膜蛋白検査(SDS-PAGE)では必ずしも病因遺伝子変異に該当する膜蛋白異常を表現しておらず、約30%の症例で膜蛋白異常を同定できない。我々はHSの新たな検査法として、赤血球膜EMA結合能をフローサイトメトリーで評価する方法に注目し、同検査の有用性を検討した。【対象】HS63例(spectrin単独欠損6例、ankyrin関連欠損4例、band 3関連欠損15例、P4.2部分欠損17例、膜蛋白欠損未検出群21例)、P4.2完全欠損症5例、HE15例(P4.1欠損5例、spectrin欠損4例)【結果】MCF (% of control)値は、spectrin欠損80.1±5.6%、ankyrin欠損75.1±3.8%、band 3欠損73.3±5.8%、P4.2部分欠損78.4±8.0%、膜蛋白欠損未検出群72.5±5.7%、P4.2完全欠損86.3±2.6%といずれも低値であった。これに対して、HE15症例では92.5±6.2%であり、多くの症例で正常範囲であったが、spectrin欠損3例は低値を示した。【考察】EMA結合能はHS全病型において低下しており、HSにおける診断法として有用である。HEも含めて更なる症例の蓄積による検討を要する。― 血液系 ―S50川 崎 医 学 会 誌

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