川崎医学会誌39-2
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24基-71: 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性肺癌のペメトレキセド耐性獲得機構の解明と克服研究代表者:越智 宣昭(総合内科学4) ペメトレキセド(Pemetrexed:PEM)は非扁平上皮・非小細胞肺癌に対するKey drugのひとつであるが、他の殺細胞性抗がん剤と同様にいずれ薬剤耐性を獲得する。我々は、EGFR遺伝子変異を有する肺腺癌細胞株(PC-9)と野生型EGFRの肺腺癌細胞株(A549)からPEM耐性株を作製し、その耐性機序にThymidylate synthase(TS)の過剰発現が関与していることを報告してきた。今回、それらの耐性株を用いて各種薬剤の感受性をMTTアッセイで測定し、EGFR変異陽性細胞株と野生型細胞株の薬剤感受性にTS発現量およびEGFR遺伝子変異が関与している可能性を検討した。 PEM耐性のEGFR変異陽性細胞株および野生型細胞株に対して、small interference RNA(siRNA)にてTSの発現を阻害したところ、EGFR変異・野生型ともにその耐性が解除された。またEGFR変異陽性PEM耐性株においては、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブ)への感受性が親株よりも高くなることが示された。現在、EGFR変異型の違いによるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤あるいは殺細胞性抗がん剤への感受性の変化を検討中である。これらの実験により、PEM耐性胞癌に対するより適切な二次治療の選択を考慮したtranslational researchを展開していきたい。24基-27: 遺伝子改変発癌マウスを用いたp53遺伝子欠損による癌浸潤マクロファージの機能解析と漢方薬投与担癌マウスのマクロファージの解析研究代表者:中村 隆文(産婦人科学)【目的】自然免疫賦活作用のある漢方薬(十全大補湯)が癌発生・増殖進展・転移を抑制するかを遺伝子改変発癌マウスに投与して検討した。【方法】1)SV40T抗原を水晶体上皮に発現させて上皮由来の未分化癌を眼球内に発生するαT3マウスを作製した。2)十全大補湯の1.5%混飼を作製してαT3マウスに長期間(1年間以上)投与した場合のαT3マウス腫瘍の増殖進展や担癌マウスの寿命について検討した。3)十全大補湯投与αT3マウスの腹腔内マクロファージの動員数と免疫抑制作用のあるIndoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の発現をフローサイトで解析した。【結果】1)αT3マウスは胎生期より水晶体上皮細胞に異形成を生じ始め、生後1~2ヶ月で上皮内癌になり、生後数ヶ月で周囲組織を破壊する浸潤癌となり脳組織に浸潤した。またさらに頚部のリンパ節や肺に転移した。比較的長期間(約1年)生存可能であり、水晶体に上皮性未分化癌を発生した。2)αT3マウスに十全大補湯混飼を生後4週より死亡するまで持続投与すると十全大補湯投与群ではαT3マウス腫瘍の明らかな増殖進展の抑制はなかったが延命効果があった。3)十全大補湯投与αT3マウスの腹腔内マクロファージの数は増加傾向にあり、IDO発現が低下傾向であった。【結論】十全大補湯投与はIDO産生マクロファージを減少させてマクロファージの抗腫瘍活性と腫瘍進展促進活性のバランスを微妙に調節して、担癌マウスの寿命を延長した可能性がある。S47

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