川崎医学会誌39-2
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24基-42: 非小細胞肺癌の原発巣と転移リンパ節におけるGlucose transpoter type-1,3の発現とFDG-PETでのSUVmax値に関する研究研究代表者:最相 晋輔(呼吸器外科学) 切除可能な縦隔リンパ節転移を有する非小細胞肺癌(以下,cN2-NSCLCと略記)においては、『cN2』の診断modalityやその定義が問題となる。肺癌の縦隔リンパ節転移は、胸部CT縦隔条件において短径1cm以上を転移陽性と判断する基準(size criteria)が日常臨床において汎用されているが、一定の割合で偽陽性や偽陰性を伴うのが実情である。 FDG-PETは細胞の糖輸送機構であるglucose transporter(GLUT)を介してFDGが細胞内に取り込まれることを応用した検査であり、GLUT-1過剰発現とFDG集積が相関することが報告されている。肺癌診療には2003年から導入されているが、原発巣と転移リンパ節におけるFDG集積(SUVmax値)およびGLUT-1発現よく相関すると報告されている。FDG-PETのcN2診断率はリンパ節内の転移巣の大きさや組織型などにより異なるが、PET導入によってもcN2診断率は十分な改善が得られておらず、当院におけるcN2診断率(感度)もCT 41.5%に対してPET 58.0%であった。また、日常臨床では原発巣PET陽性・縦隔リンパ節PET陰性であるにもかかわらず、病理学的にリンパ節転移を認める肺癌症例は少なくない。こうした症例の原発巣と転移リンパ節におけるPET所見の解離をGLUT-1,3発現との観点から探索し、またそれらが予後に及ぼす影響を明らかにすることを目的として今研究を計画した。 現在、pN2-NSCLC 26例の原発巣と縦隔リンパ節転移(38個)を対象としてGLUT-1,3等の免疫染色を行っており、今後その結果と画像所見・予後との関連を検討する予定である。24基-32:肺癌においてCOX-2発現は術後補助化学療法の効果予測因子になりうるか研究代表者:清水 克彦(呼吸器外科学)背景:COX-2は各種固形癌において腫瘍の浸潤・転移・局所免疫・血管新生などの過程に重要な役割を持つ。実際に腫瘍部におけるCOX-2の過剰発現は予後因子となる報告も多数あり、非小細胞肺癌においても重要なバイオマーカーとなりうる。一方、IB-IIIA期非小細胞肺癌に対しての標準治療は手術+術後補助化学療法であるが、その成績は満足できるものではない。このため、化学療法に対する効果予測因子の検索が行われており、シスプラチンにおけるERCC1、フッ化ピリミジンにおけるTSなどが報告されている。今回、術後補助化学療法におけるCOX-2の発現が効果予測因子となりうるかを検証した。対象と方法:当科において2004年から2011年までに手術を施行した非小細胞肺癌412例中、術後補助化学療法を施行した97例を対象にretrospectiveに解析を行った。サブセット解析として、対象を白金製剤ベースの化学療法と経口FT製剤の化学療法に分けた解析も行った。結果:97例中COX-2陽性例は56例であった。COX-2陽性症例は術後無再発生存において予後不良である傾向であった。術後補助化学療法は白金製剤ベース50例、経口FT製剤52例(併用5例をそれぞれ含む)であった。術後無再発生存に関しては、COX-2陽性症例では白金製剤ベース化学療法において予後不良である傾向であったが、経口FT製剤を使用した化学療法では差を認めなかった。術後全生存に関しても結果は同様であった。結語:COX-2の発現は白金製剤ベースの術後補助化学療法の効果予測因子となる可能性が示唆された。S45

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