川崎医学会誌39-2
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24基-15:形態形成シグナル制御による膵癌癌性幹細胞の微小環境・再構築療法への挑戦研究代表者:中村 雅史(消化器外科学)(1)新鮮切除標本よりの初代細胞培養法確立:倫理委員会の了承を得た後、新鮮膵癌切除組織よりの初代細胞培養を行った。方法は、新鮮切除組織を細切し細胞の自然拡散を待つ方法を採択した。現在、複数の初代細胞が保存されている。(2)膵癌の発症リスクであるインスリンと抑制的であるメトフォルミンが、膵癌微小環境に影響に与える影響の検証をした。先ずは、癌細胞―間質応答の主要シグナルであるHedgehogシグナルを対象にした。膵癌培養細胞を用いて、シグナルを構成する各因子(Shh,Gli1/2)に対する免疫染色を行った。現在、メトフォルミンによるシグナル抑制が示唆される染色像が得られつつある。今後、RT-PCR等の多角的な解析を予定している。Hedgehogシグナル依存性の癌腫は多岐に渡るため、膵癌のみならず他の多くの癌での新たな治療法確立に直結する可能性がある。(3)癌性幹細胞制御のための標的物質スクリーングのための自己抗体探索:癌性幹細胞で過剰発現される物質が自己抗体を誘発するという仮説で膵癌患者の血清スクリーニングを行った。患者血清に認識されるいくつかの候補物質が同定されており、今後の本課題実行上のよい標的になる。24基-81: 非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease)/非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcholoicsteatohepatitis)の進展、改善における酸化ストレスマーカー血清Thioredoxin(TRX)の意義研究代表者:川中 美和(総合内科学2) 非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcholic steatohepatitis:NASH)であり、肝硬変や肝細胞癌へと進行していく脂肪肝である。NASHの確定診断には肝生検が必須であり、血検査などの有用なバイオマーカーがいまだ明確になっていない。今回、NASHの病態のひとつである酸化ストレスマーカー、血清Thioredoxin(TRX)を測定し、(Non-alcoholic fatty liver;NAFL)からNASHへの進展またはNASHの線維化の進展の指標となるか否かにつき検討した。対象は繰り返し肝生検を行ったNAFL11例、NASH60例、NAFL11例では5例で線維化が進展し、6例が非進展であった(観察期間5.8±3.1年)。baselineでの線維化進展例のTRXは84.2±32.2、非進展例では31.3±11.9(p=0.0062)とTRX高値例で線維化が進展していた。また、NASH60例においては13例で線維化が進展し、47例が非進展であった(観察期間3.8±2.7年)。線維化が進展した線維化の初回肝生検時のTRXは35.6±23.0、2回目肝生検時のTRXは65.0±32.2と有意に上昇していた(P=0.0052)。NASH、NAFLにおけるTRX値は線維化進展の指標として有用である。S42川 崎 医 学 会 誌

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