川崎医学会誌39-2
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24基-47:腎線維化における酸化ストレス依存的Wntシグナル伝達制御機構の解明研究代表者:佐藤 稔(腎臓・高血圧内科学)[背景]腎の線維化進行機序は腎の構成細胞が多種多様であることからも複雑であり、腎の線維化に関する知見は他臓器と比べて不十分で、未だその機序は完全には明らかとなっていない。近年、尿細管上皮細胞の細胞周期がG2/M期で停止することと腎線維化進行とに関連があることが明らかとなった。しかしながら、腎線維化過程で「尿細管細胞がG2/M期で細胞周期が停止する機序」に関しては今のところ報告がなく不明である。我々は、「酸化ストレス増加によるβ-catenin/FOXO複合体形成増加」がG2/M期での細胞周期停止に関与していると考え、「腎尿細管細胞のWnt/β-cateninシグナル活性化に対する酸化ストレス制御は線維化進展に対する新たな治療法開発の標的となる」との仮説を立て、検証を行った。[方法]ヒト培養尿細管上皮細胞を用いた。活性酸素存在下と非存在下において、Wnt刺激を行い、G2/M期へ細胞誘導された細胞の比率をFACSにて検討した。また、遺伝子発現の変化の違いをquantitative real-time PCRにて解析し、細胞周期関連遺伝子のうちG2/M期への誘導遺伝子の発現が増加するのかを検討した。また、G2/M期細胞では線維形成性サイトカインである間葉系細胞増殖促進因子のトランスフォーミング増殖因子beta (TGF-β)の発現、結合組織成長因子(CTGF)の発現が増加するのかを検討した。[結果]活性酸素存在下では活性酸素非存在下都比較し、Wnt刺激によるG2/M期への細胞誘導が増加した。また、cdc2、サイクリンBなどのちG2/M期細胞特有の蛋白の遺伝子発現も増加していた。このG2/M期細胞ではTGF-βの発現、CTGFの発現も増加していた。[結語]酸化ストレスは細胞のG2/M期での細胞周期停止と引き続く線維形成性サイトカイン分泌を増加させる。24基-48: 糖尿病性腎症の進展過程におけるNADPHオキシダーゼのアイソフォームNox1、Nox2、Nox4の病態的意義研究代表者:浪越 為八(腎臓・高血圧内科学)【目的】糖尿病性腎症進展には活性酸素種の主要産生源NADPH oxidase活性化が関与している。しかし、その細胞膜isoform,Nox1,Nox2,Nox4の病態的意義は解明されていない。本研究では、遺伝子改変マウスのstreptozotocin(STZ)誘発糖尿病モデルを用いて、糖尿病性腎症進展における各々の病態的意義を解明する。【方法】6週齢雄Nox1,Nox2,Nox4 knockout(KO)/wild-type(WT)マウスにSTZ腹腔内投与による糖尿病群と偽投与対照群を作成。糖尿病発症後、10,20週目に腎組織を採取した。アルブミン尿、糸球体硬化度、real-time PCRによる病態関連mRNA発現、免疫染色による酸化産物を評価した。【結果】20週WTでは糖尿病によりアルブミン尿の増加と糸球体硬化の進展が生じる。Nox1KOではいずれも軽減されていたが、Nox2KOではいずれも改善がみられず、Nox4KOではアルブミン尿のみ軽減を認めた。10週Nox1WTでは糖尿病によりNox2、fibronectin、α-SMA mRNAの有意な発現上昇を認め、Nox1KOで抑制されていた。糸球体nitrotyrosine(NT)蓄積は20週Nox1WTで糖尿病により有意に増加し、Nox1KOで完全に抑制されていた。一方、Nox4KOでは糖尿病によるNox2 mRNA発現上昇は抑制されず、糸球体NT蓄積の抑制も不十分であった。【結論】糖尿病性腎症進展にはNox4よりもNox1活性化の関与が推察された。S36川 崎 医 学 会 誌

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