川崎医学会誌39-2
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24基-43:重症虚血肢の内皮障害と皮膚灌流圧からみた重症度分類研究代表者:正木 久男(心臓血管外科学)目的:慢性重症虚血肢の体位変化による皮膚灌流圧測定(SPP)と血液検査(肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor:HGF)と血管内皮障害の1つのマーカーであるvon Willebrand Factor(vWF))から重症度分類を作成することを目的とする。対象および方法:当科で入院した閉塞性動脈硬化症のFontaineⅢ、Ⅳ度の19例23肢を対象とした。年齢は、63-92歳、平均78歳、男性13例、女性6例で、方法は、上肢より採血してHGFおよびvWFを測定する。次に安静時ABI(足関節収縮期血圧/上肢収縮期血圧)、安静時TBI(足趾血圧/上肢収縮期血圧)を測定し、その後、仰臥位で患肢の足背部を測定し、その後座位とし、同様に測定する。再び仰臥位にして患肢の足底部を測定し、その後座位とし、同様に測定する。さらに加温による測定も行った。結果:ABIは0-0.7、平均0.31、TBIはすべて測定不能、SPPは、足背部臥位で5-35mmHg、平均19±6mmHg、足背部座位では20-70mmHg、45±19mmHg、足底部臥位0-53mmHg、平均25±13mmHg、足底部座位35-90mmHg、平均55±18であった。HGFは0.3以下12例、その他5例は0.3以上であった。VWFの抗原定量は13例が高値であった、VWFの因子活性も13例は高値であった。VWF高値例はABIもSPPも低かった。考察および結語:重症虚血肢の重症度と内皮障害の程度は相関する傾向であった。24基-54:移植された代用血管の組織治癒過程に関する病理組織学的検討研究代表者:田淵 篤(心臓血管外科学)【目的】臨床例で得られた各種代用血管の摘出標本について組織治癒、器質化の状況を病理組織学的に明らかにする。【材料、方法】 既存の摘出標本45症例、50標本について肉眼的観察、H-E染色、Azan染色、Elastica Van Gieson染色を行い、代用血管の組織治癒、器質化あるいは吻合部狭窄の状況を検討した。新規の標本は、今年度は再手術例がなく、得られなかった。【結果】ダクロン製人工血管では人工血管の基材を通じての器質化がみられたが、新生内膜は全例血栓あるいは線維組織からなり、移植後28年経過した例でも内皮細胞は確認されなかった。ePTFE人工血管は器質化が見られず、新生内膜は厚い血栓のみであった。透析用シャント例では、人工血管外周に線維性被膜を形成し、穿刺部から人工血管内腔にコラーゲン線維、線維芽細胞の浸潤がみられた。透析用ポリウレタン製人工血管は、外周の線維性被膜は乏しく、穿刺部から内腔への線維組織の浸潤は観察されなかった。【まとめ】1.ダクロン性人工血管は器質化を認めたが、新生内膜は血栓あるいは線維組織のみであった。 2.ePTFE人工血管は器質化がみられず、シャント例は穿刺部から線維組織、線維芽細胞の浸潤がみられた。 3.ポリウレタン性人工血管は全層で線維組織、線維芽細胞の浸潤を観察できなかった。S34川 崎 医 学 会 誌

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