川崎医学会誌39-2
35/86

24基-11:高血圧症における心房細動発症の予知と予防に関する研究研究代表者:堀尾 武史(総合内科学3)【目的】高血圧症に対するレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬の心房細動発症予防効果に関して、まだ定まった見解は得られていない。また、スタチンに関しても、心房細動の新規発症防止に有効という成績と無効であるという成績が混在している。今回我々は、日本人高血圧患者においてRA系阻害薬、スタチン及びその組み合わせが心房細動の新規発症に及ぼす影響を後向き縦断観察研究にて調査した。【方法】心エコー検査を受けた本態性高血圧症例の患者データベース(1,500例)を用い、検査時洞調律であり、発作性心房細動の既往がなく、さらに薬剤投与の内容が観察終了の時点まで確認された912例を対象とした。観察期間中に発作性または慢性の心房細動が新たに確認された例を心房細動発症例とした。【成績】平均観察期間は4.6年で、観察期間中の心房細動新規発症は43例(1.0%/年)であった。心房細動の新規発症頻度はRA系阻害薬またはスタチンの使用により減少する傾向を示した。心房細動発症に関与する種々の交絡因子で調整したCox比例ハザード解析では、RA系阻害薬あるいはスタチンの使用で心房細動の新規発症は減少する傾向を示し、さらに両者の併用が心房細動発症を有意に減少させていた(Hazard ratio 0.39、P=0.031)。【結論】本研究の結果、日本人高血圧患者において RA系阻害薬とスタチンの併用は、心房細動新規発症リスクの低下と関係することが縦断的観察研究にて明らかとなった。RA系阻害薬とスタチンは高血圧症における心房細動の一次予防に対して相加的あるいは相乗的効果を有する可能性が示唆された。24基-84:画像診断と血清マーカーによる不安定プラークの診断法の確立研究代表者:根石 陽二(循環器内科学)背景:不安定狭心症(UAP)では安定狭心症(SAP)と比較し、冠動脈プラークから産生されるCRPが多いことが報告されている。本研究の目的は、炎症性バイオマーカーであるIL-6やMMP-9、責任病変プラークから産生されるCRPを定量的に評価し、臨床像や血管内超音波法(IVUS)を用いたプラーク性状との関連を検討すること。方法:当院にて狭心症を診断されIVUSガイド下に経皮的冠動脈形成術を施行した18症例を対象とした(平均年齢68歳、男性15例、SAP 9例、UAP 9例)。CRPに関してはマイクロカテーテルにて責任病変遠位側で採血を施行し、プラーク局所のCRP産生をTranslesional CRP gradientとして測定した。結果:UAPはSAPに比べ有意にMMP-9,Translesional CRP gradientが高値であった(MMP-9:1405±835 vs. 640±256 μg/l,p=0.04,CRP: 0.026±0.033 vs. 0.003±0.007 mg/l,p<0.05)。MMP-9とIB-IVUS上の脂質成分占有率との間には有意な相関を認めなかった(R=0.22,p=0.40)。一方、Translesional CRP gradientと脂質成分占有率との間に有意な正相関を認めた(R=0.54,p=0.02)。結論:Translesional CRP gradientはIB-IVUSを用いたプラーク組織性状診断と関連しており、両者は不安定プラークの検出に有用である可能性が示唆された。S31

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です