川崎医学会誌39-2
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24基-41:左室収縮能正常例ならびに左室収縮能低下患者における左室拡張能の検討研究代表者:玉田 智子(循環器内科学)【背景】心エコー図・ドプラ法による左室流入血流速波形と僧帽弁輪部速度の拡張早期成分(e’)は心不全例における左室拡張能評価や予後予測に用いられている。一般に、左室拡張能の障害は収縮能の低下に先行するといわれているが、日常臨床において左室駆出率(LVEF)が低下しているにもかかわらず、左室拡張能の指標e’が加齢に伴う生理的範囲内の低下にとどまる例がある。【目的】左室収縮能低下例において、左室弛緩能が生理的範囲内の低下にとどまる例の頻度とその意義について検討すること。【対象と方法】洞調律を有し、LVEF < 50%であった連続105例を対象とした。e’が健常例の年齢別平均値±SDの範囲内であった群 (N群)と、それより低下していた群 (L群)に分類し比較検討した。【結果】N群は53例(50.5%)、L群は52例(49.5%)であった。両群間で年齢、左室拡張末期容積、収縮末期容積、LVEF、E/A比, E波の減衰時間、収縮期右房-右室圧較差に差は認めなかった。一方、N群ではL群に比して、男性の比率が高く、左室心筋重量係数が有意に小であった。【結語】左室収縮能低下例の約半数でe’が生理的範囲内の低下とどまっており、それには心肥大の程度が関連している可能性が示唆された。24基-98: 最適な僧帽弁形成術術式決定のための3次元経食道心エコー図法による僧帽弁複合体の定量研究代表者:尾長谷 喜久子(循環器内科学)背景:機能性僧帽弁逆流に対する僧帽弁tethering軽減および左室拡大防止する方法として乳頭筋吊り上げ術があるが適切な吊り上げの程度については明らかな基準がなく、外科医の経験によって決定されている。適切な吊り上げ糸の長さの決定のためには心周期を通じた乳頭筋先端と僧帽弁輪の距離の変化を把握することが必要である。方法:正常例6例、左室機能低下症例5例について3次元経食道心エコー図法用いて前、後それぞれの乳頭筋先端から僧帽弁前弁輪中央までの距離を計測した。弁下部を明瞭に描出するために画像の取り込みは経胃アプローチを用い、前および後乳頭筋の先端と前弁輪の中央点の3次元座標を抽出してこれらの距離の経時的変化を計算した。結果:経胃アプローチにより全症例において乳頭筋先端および前弁輪は明瞭に描出され、フレームごとの追跡も可能であった。正常群では乳頭筋-前弁輪との距離は前、後乳頭筋ともに収縮早期に拡大し、収縮末期に短縮する傾向がみられた。これに対し左室機能低下群ではこのような傾向は観察されなかった。結語:収縮期早期の乳頭筋先端と前弁輪の距離の拡大は僧帽弁輪のサドル型が強くなり前弁輪が上方に変位することや乳頭筋および左室の収縮が関与していると考えられる。これらの機能が低下している左室機能低下症例では正常例で観察されるような周期的な変化は消失していると考えられた。今後、症例数を増やし、さらなる検討が必要である。S30川 崎 医 学 会 誌

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