川崎医学会誌39-2
32/86

24基-56:メカニカルストレスに対する心室形態制御におけるカルシウム輸送体の役割研究代表者:毛利 聡(生理学1) 心筋細胞は生後すぐに分裂能を失い、高血圧、運動などの血行動態変化に対して心筋細胞を肥大させて応答する。心筋細胞の収縮・弛緩にはCaの制御が不可欠であるが、心肥大の分子メカニズムにおいてもCaが重要な役割を果たしていることが明らかになってきており、圧力負荷などのメカニカルストレスがどのように心筋細胞のCa動態に影響しているかを検討した。マウスの大動脈弓部を縮窄(TAC)し、血管抵抗を増加させることで左心室の肥大を惹起させ、8週で左心室重量は非TAC群に対して30%増加していた。心エコーによる駆出率は非TAC群が52%であったのに対し8週で28%、16週では20%に低下していた。これらの心臓を麻酔下に摘出し、ランゲンドルフ灌流にてコラゲナーゼ処理して心筋細胞を単離してIndo-1によるCaイメージングを行った。観察は単離心筋細胞を電気刺激によるペーシング下に行い、定常収縮におけるCaトランジェント計測と、リアノジン受容体を開放させるカフェイン投与によって筋小胞体のCaストアを定量した。8週ではTAC群ではCaトランジェント最大値が増加しており、筋小胞体のCaストアも増加していた。16週では局所的なT管構造の乱れが生じており、Caトランジェントの細胞内不均一を認めた。これらの結果から、心肥大から心不全への移行においてもCa輸送体が重要な役割を果たしていることが示唆された。24基-76:多波長励起を用いた自家蛍光観察による心筋代謝機能評価システムの開発研究代表者:小笠原 康夫(医用工学) 本研究は、NADHとFADの蛍光イメージの拮抗的反応を利用した心筋代謝機能イメージングシステムを発展させて、FAD/NADH蛍光比イメージングが可能なシステムの開発を目標とする。これまでの研究で開発した二波長パルス励起光源とFAD/NADH蛍光イメージング観測装置を連結して、観測システムの試作と撮像画像の処理法について検討した。試作システムは2波長励起光源と高感度CCD(EM-CCD)撮像部およびこれらの励起・撮像コントローラから構成されている。低酸素時に増強するNADH蛍光と逆に減弱するFAD蛍光を測定するために紫外線LEDと青色LEDを用いた励起光を使用した。蛍光は20~30フレーム/秒で行われるため、フレームごとに交互に二つの励起光を照射してそれぞれの蛍光画像を撮像する構成とした。動画の連続したフレーム画像から交互にNADH蛍光画像とFAD蛍光画像を抽出して、それぞれの蛍光動画像を作成するとともにこれらの蛍光強度比を画像化する演算処理を行った。とくに、対象として心臓表面上に設定した関心領域は心拍動に応じて動画像のフレーム内を移動するため、関心領域をフレームごとに追跡設定するための画像処理を行った。NADH・FAD蛍光の連続撮像と画像処理によりNADH・FAD比イメージングが可能になり、心筋表面の低酸素状態の画像化とその有用性が分かった。― 循環器・脈管 ―S28川 崎 医 学 会 誌

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です