川崎医学会誌39-2
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24基-36:鉄イオンはいかにして細胞質ゾル内を輸送されるのか?研究代表者:岸 文雄(分子生物学2(遺伝学)) 鉄は生命活動に必須の元素である。遷移元素である鉄は電子の受け渡しを行うには好都合であり多くの部位で利用される。一方、その反応性の高さゆえに、二価鉄がフェントン反応を介して産生する活性酸素は、活性酸素産生の最も主な原因とも考えられている。そこで、活性酸素の発生を抑制するために、二価鉄イオンとして存在する状態を最小限にする機構を生体は備えている。しかし、鉄輸送体DMT1がエンドソーム内腔から細胞質ゾル中へ放出した二価鉄が、いかにして主な鉄の利用部位であるミトコンドリアまで輸送されるかについては、全く判っていない。そこで、本研究ではDMT1から鉄を受容するシャペロン分子の探索を行うことを目的に研究を進めた。Yeast two hybridにより、結合分子の探索を行ったところ、DMT1に結合する分子DMT1 binding protein(DBP)を見出した。ヒト培養細胞を用いて共免疫沈降法を行うと、DMT1とDBPがヒト細胞内でも結合していることが明らかとなった。DMT1には4つアイソフォームが存在するが、全てのアイソフォームにこのDBPが結合することが明らかとなった。さらに、siRNAによりDBPをノックダウンし、細胞に鉄を負荷すると、細胞内の鉄取り込みが減少することを確認することができた。このことから、DBPはDMT1から鉄を受け取り、細胞質内の輸送に関与していることが示唆された。S27

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