川崎医学会誌39-2
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24基-68:成体脳嗅覚系ニューロンの新生分化機構の微細構造解析研究代表者:樋田 一徳(解剖学) 成体脳の一部のニューロン群は生後も側脳室下帯において新生・遊走し、嗅球ニューロンへ分化する。本研究は新生細胞が嗅球ニューロンへ分化するタイミングと、その微細構造についての焦点を縛り、C57BL6系及びTH-GFPトランスジェニックマウスを用い解析を進めた。 側脳室下帯へのin vivo脳定位法によりCell Tracker Orange(CTO) を注入標識し、72時間後まで時差的固定を行ない、遊走経路における形態と化学的性質(TH-GFP発現)をレーザー顕微鏡で解析した。またanti-CTOや各種細胞マーカーを用い、metal-DAB法で置換標識し超高圧電顕(生理研 H-1250M)で解析し、更に微細構造をデジタル電顕(本学JEM-1400)で解析した。共に連続傾斜撮影から電子線トモグラフィー処理を行った。 新生した細胞が脳室に沿った嗅球への接線状遊走の速度は、その後の嗅球表層への放射状遊走の2~3倍であった。TH-GFPの発現は主に放射状遊走過程で始まり、突起の形態が変化し、同時に他の化学的性質が発現している。突起の先端は薄膜状で細胞質が乏しく、その先の細胞膜は周囲の細胞間細隙に入り込んでいる。その微小環境にはPSA-NCAMなどが発現しており、遊走の方向性決定への関与が示唆される。 接線状から放射状へ遊走方向の変化が分化のキーとなることが分かり、現在更に解析を進めている。24基-65:マウス嗅球投射ニューロンの三次元立体再構築研究代表者:清蔭 恵美(解剖学) 空気中にある無数の匂い分子は、嗅細胞が発現する特定の匂い分子受容体に結合し嗅細胞を興奮させる。同じ匂い分子受容体を発現する嗅細胞の軸索は、嗅球表面にある同じ糸球体に集まり入力調整され、投射ニューロンであるmitral cell やtufted cellによってその情報が高次中枢へと運ばれる。しかし、このように一つの糸球体で収束・パターン化された匂い情報が、どのような経路を通過して高次中枢へと運ばれ、そしてその情報を拡散処理されるかについては未だ明らかになっていない。そこで本研究では、単一のmitral cellとtufted cellを可視化させるため、マウス嗅球の僧房細胞層と外網状層表層にリコンビナントウィルス(sindbis virus) ベクターを注入する感染実験を行った。次いでマウスを灌流固定後、連続スライスを作製し、切片越えで樹状突起と軸索をトレースすることにより糸球体内での樹状突起分布と軸索投射経路の3次元立体再構築を行った。現時点までの感染実験の結果、糸球体内での単一のmitral cellの樹状突起とtyrosine hydroxylase(TH) 介在ニューロンとのコンタクトは6~8箇所あり、そのうちシリアルシナプス(labeled mitral→TH→unlabeled mitral)が確認され、mitral cell はTH介在ニューロンによって側方抑制を受けていることが示唆された。また現在、mitral cellとtufted cellの投射経路についても軸索をトレースし解析を進めている。S23

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