川崎医学会誌39-2
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○抄録の並び順は、原則としてポスター展示の並び順となっております。24基-8:単一個体が時系列クローンである条虫(サナダムシ)のモデル動物化をめざして研究代表者:沖野 哲也(微生物学) 条虫類は雌雄同体で、同一個体に頭節~老熟節と年齢の異なる片節が、あたかも映画フィルムのように時間軸に沿って時系列で並んでいる。つまり、虫体の後方にいくにつれ少しずつ加齢が進んでいるので、多細胞動物の分化・加齢・エネルギー代謝のモデル動物としてユニークな材料である。本研究は、マンソン裂頭条虫(Spirometra erinaceieuropaei)のライフサイクルを実験室内で完成させ、1匹の成虫を起源とする3倍体クローンの幼虫を多量に維持し、遺伝的に均一な条虫株を樹立することを目的としている。現在、3倍体と考えられる幼虫12条、2倍体と考えられる幼虫241条、シマヘビ・ウシガエル由来(野生株:3倍体か2倍体かは不明)の幼虫192条の合計445条を、実験的第2中間宿主であるマウス(ICR♀)の体内で維持している。維持している過程で、感染後数ヶ月のマウスの頸部背面に脱毛現象が観察された。脱毛部位は掻痒感からかマウス自身が掻きむしることにより皮膚の炎症が悪化したため、マウスを剖検してその病変部を観察したところ、病変部周辺の皮下には幼虫が感染していた。このことから感染幼虫による宿主への影響が示唆されるが、この脱毛現象は、全ての感染マウスで一律に起こるわけではないので、宿主の個体差、あるいは感染幼虫(3倍体・2倍体・野生株)間での差異の可能性が考えられ、免疫応答も含め、今後検討していきたい。24基-95:アポトーシスの分子機構の解析研究代表者:刀祢 重信(生化学) アポトーシスの分子機構を、実行過程(最終過程)と最初期の過程の2局面で解析してきた。実行過程で世界的に最も未解明な核凝縮について、これまでにcell-free アポトーシス法と微速度映画を用いて、核凝縮がリング形成、ネックレス、核崩壊の3ステップをたどることを発見し、そのうち数分で生じるリング構造を引き起こす因子(リング形成因子)について特に集中的に調べてきた。(ネックレス、核崩壊についてはそれぞれDNase、caspase-6が引き起こすことを明らかにしている)今年度は、リング形成に深く関わる、ヒストンH2Bのリン酸化を担う酵素を特定するために、可能性のあるキナーゼをノックアウトする試みを始めた。現在Mst-1のノックアウト細胞株が得られつつあり、その結果を報告する。また国内2か所の大学、研究所と共同研究で新しい顕微鏡システムを単離核のアポトーシスに応用する試みを始めた。そのうち、レーザープラズマ軟X線顕微鏡によって、核のリング内部を詳細に観察することができた。 アポトーシス最初期の感知システムについても解析を続け、p53非依存性で核DNA傷害の情報をミトコンドリアに伝える、新規のシグナル伝達経路の存在を明らかにしつつある。― 基礎 ―S22川 崎 医 学 会 誌

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