川崎医学会誌39-2
22/86
24基-18:慢性肉芽腫症の肉芽腫形成における細胞走化性の役割を解明する研究代表者:山内 明(生化学) 我々はこれまで、新規細胞動態解析法(TAXIScan)を用いてアレルギー性疾患患者の好酸球が正常とは走化性が異なり、新しい診断方法となるうることを報告した(JIM、320(1-2)、155-163)。一方、先天性免疫不全症の慢性肉芽腫症CGDでは白血球の殺菌因子である活性酸素が生成されず、皮膚や重要臓器に肉芽腫を形成する。この原因は活性酸素産生酵素NADPHオキシダーゼの欠損であるが、この酵素と細胞走化性との関連性は不明である。そこで我々はNADPHオキシダーゼと細胞遊走の関連性、および治療薬の一つIFNγの走化性への影響の解明を試みた。分化後に好中球様になる骨髄性白血病細胞株PLB985を用いて、好中球様細胞の活性酸素産生能と走化性の関連を検討した。これまでNADPHオキシダーゼの各サブユニット(gp91phox、p22phox、p47phox、p67phox、p40phox)が分化後に発現すること、さらにこの細胞が細菌由来の走化性物質fMLPに対して遊走することを確認した。現在、各サブユニットをノックダウンし、細胞走化性をTAXIScanにて解析中である。我々はfMLPと内在性の遊走因子(LTB4、PAF)では正常好中球の遊走パターンが異なることも見出しており(投稿中)、CGDにおいても好中球の遊走パターンが変化することが肉芽腫形成の一端となる可能性も考えている。24基-30: 癌の宿主免役逃避機構:非小細胞肺癌におけるHERシグナルによるMICA/B発現制御を介した自然免疫逃避機構の解明とがん治療への応用研究代表者:沖田 理貴(呼吸器外科学)【背景】EGFRやHER2シグナルは腫瘍細胞においてMHC class I分子の発現を制御し細胞傷害性T細胞による獲得免疫からの逃避機構に関与することが報告されてきたが、NK細胞による自然免疫からの逃避との関連については未解明である。【方法】非小細胞肺癌細胞株を用い、HER family シグナルを活性化あるいは不活化が、①腫瘍細胞に発現するNK細胞活性化受容体NKG2DのリガンドMICA/B、ULBP1-3の発現、②細胞内シグナル、③NK細胞による腫瘍細胞傷害活性、に与える影響をフローサイトメトリー法を用いて解析した。【結果】非小細胞肺癌細胞株ではEGFによるEGFRシグナル活性化により、A549ではMICA/B発現レベルが低下し、NK細胞障害活性も低下した。一方、PC9ではNRGによりMICA/B発現が上昇し、NK細胞傷害活性も増強した。HERシグナルの主要な2つの下流シグナルのうち、PI3K-AKTシグナル阻害でMICA/Bの発現が低下することから、PI3K-AKTシグナルがMICA/B発現を制御していると考えられた。【結論】HER familyシグナル活性化は、MHC class IのみならずMICA/Bの発現をも制御し、NK細胞による免疫監視機構からの逃避にも関与することが示唆された。― 病態と治療 ―S18川 崎 医 学 会 誌
元のページ