川崎医学会誌39-2
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24特-1:5-アミノレブリン酸によるシスプラチン腎毒性抑制作用の臨床応用研究代表者:猶本 良夫(総合外科学) 胃癌に対する標準的化学療法はS-1+シスプラチン療法であるが、シスプラチンは強い腎毒性を持つことから、腎障害予防目的に大量輸液・利尿剤による強制利尿の為入院を要し、催吐性によるQOL低下も問題である。我々は2011年より多施設共同研究「切除不能または再発胃癌患者に対するshort hydration法を用いたS-1+CDDP(シスプラチン)の認容性試験」を進行中である。従来1週間程度の入院と大量輸液により腎障害予防を行ってきたレジメンを、外来で短時間に行える様、安全性と認容性を示す試験である。5-アミノレブリン酸(ALA)は低分子δアミノ酸で、ヘム化合物の前駆体である。ヘムはヘモグロビンやチトクローム、カタラーゼなどのヘムタンパク質補欠分子族として、多くの重要な生理作用を示す。本研究は、ALAの生理活性のひとつである腎障害防止効果を臨床応用し、新規腎障害予防法の確立を目指す。 【臨床研究】 胃癌患者に対するshort hydration法を用いた認容性試験に加え、Short hydration+ALA群を設定。両群間の有害事象発生率に差が無いことを示す。【非臨床研究】従来の大量補液とALA投与が同様の機序で腎障害を防止し得るかを動物モデルで検索。臨床/非臨床試験の知見から、腎障害予防法としてのALA療法をHydration法と比較、腎障害予防効果とQOLを評価する新規臨床試験を計画。23特-3:悪性中皮腫と強皮症に関する包括的な免疫動態の解析研究代表者:西村 泰光(衛生学) 石綿や遊離ケイ酸(シリカ)の曝露は、それぞれ癌および自己免疫に関わる。悪性中皮腫(MM)と全身性強皮症(SSc)患者、及び胸膜プラーク陽性者(PL)と珪肺患者(SIL)について広範な免疫動態の解析を行った。MMやPLではTh細胞、CTL、NK細胞上のCXCR3が低く、単球系細胞上のCD80が低かった。NK細胞上のNKp46やFasLはMMで低く、次いでPLで低かった。mRNA量を調べた時、MMやPLのThではIL-1R1が高く、単球系細胞ではIL-1βが高かった。MMの刺激後ThやCTLではTNF-α mRNAが高値で、一致してMMでは血漿中TNF-αが高く、MCP-1濃度も高かった。他方、SScやSILのTh上ではCXCR3やIL-1R1が高く、CTL上ではCD45RO、CXCR3、FasL、CD69、HLA-DRが高かった。SScのThではIL-1R1やIL-18R1mRNA量も高く、刺激後ThではIL-17 mRNAも高かった。CTLにおけるGranzyme B、IFN-γ、FasLmRNA量はSScやSILで高値であった。SScでは血漿中のIP-10が著しく高かった。以上の結果は、石綿やシリカがそれぞれ免疫抑制的/免疫賦活的に作用している事、またMMとPL、SScとSILの類似性は、石綿やシリカの免疫学的影響がMM及びSScに関わることを示唆する。― 特別推進 ―S14川 崎 医 学 会 誌

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