川崎医学会誌39-2
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24基-19:脳サイズ決定に関わる中枢神経系細胞の力学知覚機構の解明研究代表者:小曽戸 陽一(解剖学) 大脳皮質を構成する神経細胞は、胎生期の神経上皮組織で神経前駆細胞が増殖・分化することで産生される。この過程は内因性(遺伝的プログラム)および外因性(細胞外環境の変遷)が密接に関わって制御されているため、両者を区別して解析することが必要である。 本研究では、外因性、特に組織構造の物理的特性が神経前駆細胞の増殖・分化に与える影響を評価するため、胎生期の神経上皮組織を模倣した培養系の確立を目的とする。間葉系幹細胞を組織の弾性率に対応した培養基質上で培養すると、弾性率に応じて細胞の分化の方向性が変化したという報告がある。そこで、物理的特性として弾性率に着目した。弾性率は生体では組織のかたさ・やわらかさを表す指標であり、その変動は細胞外基質を介して機械的刺激の伝達に関与すると考えられている。さらに、弾性率は数値化できるため、培養基質のかたさを制御することで脳組織の弾性環境を再現し得ると期待できる。 上記の目的のため、神経発生初期・中期・後期のマウス胎仔脳の弾性率を、原子間力顕微鏡を用いて測定した。大脳皮質生組織スライスを作製し、生理的条件下で脳の各層の弾性率を測定したところ、その数値に時空間的な変動があることを見出した。今後は、この結果を培養系に反映させ、弾性率変動に起因する機械的刺激の伝達が神経前駆細胞の増殖・分化を制御する分子メカニズムについて精査していく。24基-16:アルコール依存症におけるリアノジン受容体の変化とその役割研究代表者:黒川 和宏(薬理学) アルコールの長期にわたる多量摂取は、中枢神経系機能障害としてアルコール依存などの種々の病態を引き起こすことが知られている。本研究では、アルコール身体依存獲得モデル動物を用いて、ルコール身体依存形成におけるryanodine受容体の変化ならびにryanodine受容体の調節機序を行動薬理学的および神経化学的観点から検討した。マウスにアルコール蒸気を9日間連続曝露させた後、休薬12-18時間をピークとして強度の退薬症候の発現が認められ、 アルコール身体依存の形成が確認された。このマウスのfrontal cortexおよびlimbic forebrain領域においてryanodine受容体(type-1および-2)の蛋白発現増加が認められた。Ryanodine受容体拮抗薬であるdantroleneをアルコール蒸気曝露と同時に9日間毎日脳室内に投与した。その結果、休薬後に認められる退薬症候の発現は有意に減弱した。これらの結果から、アルコール身体依存形成にryanodine受容体のupregulationが関与すると考えられる。次に、dopamine D1受容体拮抗薬をアルコール蒸気曝露と同時に9日間毎日脳室内に投与したところ、休薬後に認められる退薬症候の発現は有意に減弱した。この条件下では、マウスのfrontal cortexおよびlimbic forebrain領域におけるryanodine受容体(type-1および-2)の蛋白発現増加は、dopamine D1受容体拮抗薬の処置により有意に抑制が認められた。これらの結果から、アルコール身体依存形成においてdopamine D1受容体を介したryanodine受容体の upregulationがその発現に一部関与している可能性が推察される。― 基礎 ―S12川 崎 医 学 会 誌

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