医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-92 :新規Nrf2活性化薬によるネフローゼ症候群における尿細管障害抑制効果の検討研究代表者:山本 稔也(腎臓・高血圧内科学)【研究背景】蛋白尿は末期腎不全に至るリスク因子である。蛋白尿の増加に伴う過剰な脂質負荷が尿細管細胞内で過剰な活性酸素種(ROS)を産生する。こうした過剰なROSは炎症を惹起し、ミトコンドリア障害をきたす。その結果、尿細管細胞障害が引き起こされ、腎障害を進展させる。こうした一連の障害メカニズムから活性酸素種の制御が腎保護作用として重要であることが想定されている。近年、酸化ストレス応答の転写因子であるNrf2が注目されており、Nrf2活性化薬が糖尿病性腎症患者において糸球体濾過量を改善する事が報告された。今回、腎不全モデルマウスを用いNrf2活性化による腎保護効果および分子メカニズムを検討した。【方法】3週齢雄性ICGNマウス(ICGN)を用い、Nrf2活性化薬にRTAdh404(dh404;10mg/kg/day,ゴマ油に溶解し経口から投与)を用いた。3週間投薬した後に腎内炎症及び線維化とミトコンドリア機能を検討した。In vitroでヒト近位尿細管細胞(hPTEC)に遊離脂肪酸刺激を与え、dh404で治療する事で分子機構を検討した。【結果】ICGNは腎内炎症及び尿細管間質線維化が顕著であった。また、COX/SDH染色でミトコンドリア機能障害を認め、透過電顕でミトコンドリア形態変化を認めた。これらの変化はdh404投与群で有意に軽減した。hPTECに遊離脂肪酸刺激を与えると、ミトコンドリアROSが増加するが、dh404治療によりミトコンドリアROSが消去され、ミトコンドリア機能が改善した。【結論】Nrf2活性化薬は、活性酸素種を消去する事でミトコンドリア機能を保持し、腎保護作用を示す。29基-108:脳血流SPECT定量のシミュレーション解析のための脳血流動態ファントムの開発研究代表者:犬伏 正幸(放射線核医学)【背景と目的】脳血流量の定量評価が不可欠な検査では、脳血流SPECTの動態(ダイナミック)撮影と、入力関数の情報として動脈血中の放射能濃度が必要であるが、従来の脳ファントムでは血流の動態を再現することができないため、定量解析法の精度低下因子の解明や精度向上の提案のためのシミュレーション解析研究では、専ら患者や健常ボランティアから得られた実データの解析に基づいて報告されてきた。本研究は脳血流SPECT定量におけるシミュレーション解析のための脳血流動態ファントムを開発することを目的とする。【方法】循環回路の耐久性と安定性の検討では、成人の大動脈弓部に約6L/minの動脈血が流入するが、本ファントムでは、供給割合を考慮して一側当たり0.2から0.8L/minの流速設定が可能なポンプを使用し、回転数と流量の関係および漏水状況を確認した。マイクロスフェアモデルに基づいた脳血流シンチ製剤を想定した放射性医薬品は、血液脳関門(BBB)機能を再現するために99mTc-MAA と1µmおよび50µm濾過フィルターを組み合わせで評価した。【結果】回転数と流量の関係は、高い相関性(r=0.999)を示し、フィルターの種類で変化した。回転数の増加で接続部位から微量の漏水が観察された。接続部を強化し実施したDynamic収集では、良好な時間放射能濃度曲線が観察され、Graph-Plot解析が可能であった。S71

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