医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-52:難治性鼻副鼻腔疾患における好酸球の役割の検討研究代表者:雜賀 太郎(耳鼻咽喉科学)【背景】好酸球は様々な免疫調整機能があることがわかってきており、我々は卵白アルブミン(以下OVA)を用いたマウスのアレルギー性鼻炎モデルを中心に好酸球の役割を研究している。これまでの実験で、好酸球欠損マウス(以下Δdbl GATA)では野生型(以下WT)と比較して抗原特異的IgE産生量が有意に多かった。このことから、抗原特異的IgEが産生される過程のどこかで好酸球が抑制性に制御している可能性が示唆された。これを検証するため、フローサイトメーターを用いて顎下リンパ節・鼻粘膜の細胞分画を検討した。【方法】アレルギー性鼻炎モデルを誘導したΔdbl GATAとWTの顎下リンパ節・鼻粘膜を調製し、フローサイトメーターを用いた多重蛍光免疫染色にて解析した。顎下リンパ節はすりつぶし、鼻粘膜はコラゲナーゼ添加培地に懸濁して震盪培養し、細胞懸濁液を調製した。【結果】アレルギー性鼻炎を誘導したWTの鼻粘膜中における好酸球の割合はPBS処理の陰性対照で1%、OVA処理の陽性対照で10%と増加していた。そして、顎下リンパ節の好酸球も陰性対照と比べて陽性対照で5倍に増加していた。また、Δdbl GATAではWTと比べ、顎下リンパ節のCD11c陽性細胞が3倍に増加した。【考察】このことから、アレルギー性鼻炎では好酸球が樹状細胞による抗原提示を抑制性に制御する可能性が示唆された。29基-19:間質性肺疾患における細胞浸潤と免疫チェックポイント分子の発現解析研究代表者:八十川 直哉(呼吸器内科学)【背景】肺がんの標準治療として、現在、免疫抑制因子を標的とした分子標的薬や抗体医薬を用いて免疫抑制因子を排除もしくは阻害することによってT細胞機能を回復させ、抗腫瘍免疫を強化し、治療することが可能となった。その中でもPD-1/PD-L1経路を阻害する免疫チェックポイント阻害剤は、進行期肺癌治療で奏効率は未だ不十分であるが長期生存する患者が認められるようになった。一方で、画期的ながん治療法である抗PD-1/PD-L1抗体では、合併症として間質性肺炎が出現し、その発現予測と克服が課題となっている。【方法】本研究では、当院で病理学的に間質性肺炎と診断された129例(器質化肺炎84例、非特異性間質性肺炎23例、好酸球性肺炎14例、通常型間質性肺炎8例)における免疫チェックポイント分子の発現の多寡および局所浸潤リンパ球の多寡を免疫染色法で検討する。【結果】本年は、対象患者の検索および、免疫チェックポイント分子の免疫染色法の条件検討を行い、至適プロトコールを作成した。至適プロトコールに従い、間質性肺炎129例における、PD-L1、CD3、CD68、CD79aの免疫染色が終了し検討を行った。【考察】間質性肺炎でもT細胞浸潤が強いものではPD-L1の高発現が認められ、免疫チェックポイント阻害剤の副作用と細胞浸潤が関連していると考えられる。S62川 崎 医 学 会 誌

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